「あらアーサー、おかえりなさい」
「ただいまモリー、カノン、いらっしゃい」
「お久しぶりですおじさま」







NO CALL
NO LIFE








ぴかぴかのテーブルに赤いタータンチェックのクロスを掛けてナイフとフォークを並べていると庭の方で ばちん!と音がして、しばらくするとアーサーおじさまが帰宅した。キッチンから手が離せないおばさまに代わって少しお疲れ気味のおじさまからバッグとローブを受け取ると、おじさまはにっこり笑って頭をぽんぽんしてくれた。

「まったく驚いたよ」
「ご心配おかけしてすみません」
「いや、きみが決めたことだ。がんばりなさい」
「はい、ありがとうございます」
「さあさ、もうお夕飯ですよ。カノンは子供たちを呼んできてくれる?」
「はい」

ふわふわと鍋を宙に浮かせてスープを装うおばさまはにっこり笑って、わたしは結んでいた髪をほどきながら階段を上がった。最初にビル兄さんに声をかけるとすぐに来てくれて、わたしの頭をぽんぽんしたあとに下に降りていった。次にフレッドとジョージの部屋に行って、こんこんノックをしてからドアを開けると同じ顔がこっちを振り向いてにこにこ笑った。

「フレッド、ジョージ、ごはんだよ」
「ああ、今いくよ」
「すごいご機嫌だけど、なにかできたの?」
「これはすごいぜ、大傑作だ」
「見たい見たい」
「あとでな」

そう言ってくすくす笑う2人のあとから階段を降りていけば、こっそり振り返ったジョージがウインクをした。ちょっとときめいた。とんとん階段の最後の1段を飛び降りると、テーブルにはおじさまとビル兄さんのほかに風船ガムピンク色の髪をした魔女が1人いて、わたしたち3人は顔を見合わせてにっこり笑った。

「「やあトンクス」」
「こんにちはトンクス」
「よっ3人共、元気だった?」

くるんと振り返ってにこにこ笑うトンクスはフレッドとジョージの髪をぐしゃぐしゃにしたあとにわたしにハグをした。

「ねえカノン、フレッドとジョージと一緒にホグワーツを退学したって聞いたけど、ほんとうに?」
「ほんとうだよ」
「でももう少しで卒業だったのに、首席だったんでしょう?」
「そうなんだけど、でもね、わたし首席とかそんなものにまったく興味がなかったの。むしろ先生たちからのプレッシャーがなくなってずいぶん気分が軽くなったわ」

「みんなには内緒だよ?」と言って少しいたずらっぽく笑ってみせると、トンクスは目をきらきらさせてにっこり笑って、フレッドとジョージは「よく言った!」と言って両脇からハグをしてきた。びっくりしてばたばた暴れてみても余計にぎゅうぎゅう抱き締められてしまって、2人よりもずいぶん背の低い(というか2人が高すぎる)わたしは必然的に2人の間に埋まるわけで。そろそろ苦しくなってきた頃にどっちかの背中をばんばん叩くと、くつくつ笑うビル兄さんの声が聞こえた。

「フレッド、ジョージ、カノンが死ぬ」
「「えっ?」」

きょとんとした顔のあとに、ゆるんだ腕の中から抜け出すと「ごめん気づかなかった」なんて言ってニヤニヤ笑うフレッドとジョージがいて、それを見たトンクスが吹き出して笑いはじめた。くそう、この2人、ぜったい確信犯だ。

「さあおまえたち、席に着きなさい」

新聞から顔を上げたおじさまの一言でわたしたちは3人並んでテーブルに着く。最後においしそうに焼けたミートパイを持ったおばさまが席に着いたのを見て、全員がゴブレットを手に取って上にあげた。

「フレッドとジョージと、それからカノンの門出を祝って」
「乾杯!」

おじさまの掛け声で小さな宴会がはじまって、ホグワーツとはまた違う賑やかさに自然とほっぺたがゆるんだ。

「カノン、このミートパイすごくおいしい」
「ほんとう?よかった」
「いいなあ相棒は、そのうちこれが家庭の味になるんだもんな」
「ぶっ!フ、フレッド!」
「なんだおまえたち、まだ結婚してなかったのか」
「ビルまでからかうなよ!」
「照れるなジョージ、ああ、若いってすばらしいな」
「おやじくさいよ、ビル兄さん」


101109

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