うすいピンクの春物のワンピースに着替えてその上からローブを羽織る。黒いくしゅくしゅしたロングブーツを履いて外に出ると、先に準備がおわっていた2人が誰も中に入れないように店にありとあらゆる魔法をかけていた。最後に玄関の鍵を閉めて魔法をかけたあとに、わたしたちは『漏れ鍋』目指してお昼過ぎのダイアゴン横丁を歩きはじめた。







NO CALL
NO LIFE








からんからんと音が鳴るドアを開けて漏れ鍋の中に入ると、グラスを磨いているバーテンのトムがにっこり笑った。

「こんにちは、ミスター・ウィーズリーウィーズリーにミス・ハプシュタイン」
「「やあ、トム」」
「こんにちは」
「聞きましたよ、ホグワーツを飛び出してきたんでしょう?」
「あのババアが治めてるホグワーツなんかにいたくないんでね」
「悪戯もなにも、自由なんてまるでないさ。暖炉を借りるね」
「それはさぞつまらなかったでしょうな、今日はどちらへ?」
「そのことについてモリーおばさまから呼び出しがかかったの」
「きっと延々と説教されるぜ、『隠れ穴』!」
「カノンもはやく来てくれよ、じゃないと俺たち死んじまう」
「すぐに行くよ」

そうひらひら手を振るとジョージは『隠れ穴』と言ってフレッドと同じように消えた。さらさらの白いフルーパウダーをつかんで暖炉に入れると炎の色がきれいなエメラルドに変わって、ローブに煤がつかないように身体に巻きつけるようにしてからトムにさようならをした。

「それじゃあトム」
「ああ、いってらっしゃい」
「いってきます」

暖炉の中に入って『隠れ穴』と言うと目の前の景色がぐるぐるまわってぎゅっと目を閉じた。いまいち慣れないこの感覚にきもちわるくなってくると、どすんと尻餅をついて隠れ穴の暖炉に落ちた。残っていた灰を少し吸い込んでしまってけほけほ咳き込んでいると、先に着いていたジョージが手を引っ張って立たせてくれた。それを見ていつものように卑しくニヤニヤ笑うフレッドのことはもうスルーすることに決めた。

「あらあらカノン、煤だらけよ」

そう言う声が聞こえると、汚れてしまっていたローブが一瞬できれいになった。

「ありがとうおばさま、お久しぶりです」
「どういたしまして、さあこっちへいらっしゃい」

「あなたたちもですよ!」とフレッドとジョージに向かって言うモリーおばさまはいつもとなにひとつ変わっていなくて、ついついほっぺたがゆるんだ。

「案外怒られないかもしれないぜ」
「ああ、今日のお袋はすこぶる機嫌がいい」

そう言ってローブを脱ぎながらニヤッと笑うフレッドとジョージの間に挟まれてイスに座ると、すぐ側で ばちん!と音がして3人そろって振り向いて見ると『姿現し』したのはよく見知った赤毛の青年。

「「ビル!」」
「ああフレッドにジョージ、どうやら退学したというのはほんとうだったらしいな」

「このばか弟共め!」と言いながらも笑顔でフレッドとジョージの髪の毛をくしゃくしゃにするビル兄さんは、2人の間に座るわたしの頭にもぽんぽんと手を置いた。

「ようカノン」
「こんにちはビル兄さん」
「まさかおまえも一緒だったとはな」
「ごめんなさい」
「いや、いい。最高だ」

そう言ってわたしの髪もくしゃくしゃにすると、ビル兄さんはわたしたちの斜め前に座った。それを見たおばさまが「あら、カップがもう1つ必要ね」と言ってにっこり笑ったのを見て、わたしとフレッドとジョージは顔を見合わせてにっこり笑った。


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