ハリーを無事に連れ帰ることができたことを知ったあとに、ロン、ビル兄さんを含む6人がまだ帰ってきていないことを知って、ジョージの顔から笑顔が消えた。そうだ、まだ大手を振って喜べる状況ではないのだ。





NO CALL
NO LIFE






ハリーとジニーが一緒になって外に出ていって、おばさまはおじさまに支えられながらキッチンに入っていった。急に人が少なくなったリビングでジョージは未だソファに横になったままで、わたしとフレッドはそのソファの背もたれに寄りかかりながらジョージのことを見下ろしていた。

「ジョージ、大丈夫?」
「平気さ、カノンが一生懸命手当てしてくれたみたいだしね」
「そうだ相棒、カノンは命の恩人だぞ」
「そんな大袈裟な、ほとんどおばさまがやってくれたのよ」

「それにジョージの命の恩人はあなたをここまで運んできてくれたリーマスだわ」と言うと、ジョージは「そりゃそうだ」と言ってくしゃりと笑った。
すっかりきれいになったジョージの側頭にはやっぱりぽっかりと黒い穴が開いていて、わたしはそれが視界に入るたびにぐわんぐわんと脳みそが揺れたけれど、2人に動揺が伝わらないように一緒になって笑った。

「ロンとトンクスが帰ってきたわ!」

ばんっ!と音をたててキッチンのドアが開いてジニーがうれしそうに言った。おじさまとおばさまは顔を見合わせたあとに急いで外に出ていって、わたしたちに向かってにっこり笑いかけるジニーにほっとしたように笑い返すと、ジニーもおじさまたちのあとを追って行ってしまった。

「ロニィが帰ってきたって?」
「うん、ほんとうによかった」
「だれかさんみたいに耳をなくしてなきゃいいけどな」
「おいおい、そりゃいったいだれのことだい?」

ぎゃあぎゃあといつも通り罵りあいをはじめたフレッドとジョージを見てくすくす笑う。こんななんでもない見慣れたことがなんだかすごく懐かしかった。気づくとわたしのほっぺたを生温かいものが伝っていて、ああ、涙だ、と思った時にはもうどうしようもなく止まらなくなっていた。こっそり袖で拭っていると、それが2人に気づかれないわけがなくて、フレッドとジョージはぽかんとした顔でわたしの顔を覗き込んでいる。ああもう、いい加減に止まれ。

「カノン?」
「ごめ…っ」
「今になって泣くなよ」
「うん、」
「ほんとう、泣き虫」
「だって、」
「泣く必要なんてない」
「うん」
「そうだ、俺たちはちゃあんとここにいる」

ふわり、目をこすっていた手がどけられてゆっくり目を開けると、少しだけ上体を起こしたジョージが腕を伸ばしてわたしの片方のほっぺたに手を添えて、ソファの背もたれに頬杖をついたままのフレッドはもう片方の手をわたしの頭の上にぽんと置いた。その手は確かにあったかくて、わたしはジョージの手の上に自分の手を重ねた。ほんとうにこの2人にはかなわない。わたしが泣いている理由も、いつだって2人にはお見通しなのだ。

「いきてる」
「うん」
「フレッドも、ジョージも」
「うん」
「ありがとう」
「言っただろう?」
「ぜったいに帰ってくるって」

「俺たちが嘘をついたことあったか?」そう言ってフレッドとジョージは顔を見合わせて悪戯っぽく笑った。フレッドの手が頭から離れたのを合図に、わたしはほっぺたに添えられているジョージの手を外して、目元に残る涙をぐいっと拭いてにっこり笑ってみせた。

「生きて帰ってきてくれて、ほんとうにありがとう」


100504


ほんとうに、
恥ずかしいやつ

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