豪華な装飾が施された大きな両開きのドアをボーイが恭しく開ける、一歩足を踏み入れたサロンは、もはや別世界でした。







NO CALL
NO LIFE








きらきら輝く大きなシャンデリア、しゅわしゅわ弾けるブルーのシャンパンタワー、サロンの真ん中に立つ立派なクリスマスツリー、そして同じくきらびやかに着飾ったたくさんのマグルたち。全体的にキラキラしているサロンに、ホグワーツでの三大魔法学校対抗試合の時のダンスパーティーを思い出した。ちらっと隣のカノンを見るとびっくりしたように目をぱちぱちさせていて、そういえばあの時もカノンは自分の隣でこうしていたなあと思って少しだけ笑った。視界のはしっこにフレッドとアンジェリーナを見つけて、とりあえずはそこに行こうとカノンの細い腰に腕をまわして彼女を自分の方に引き寄せる。

「はぐれないで」

滅多に着ないタキシードのせいでやたらぴしっとした背中を折り曲げて僕よりもずいぶん小さいカノンの耳元で言うと、カノンは少しだけほっぺたを赤くしてこっくり頷いた。こんな小さな反応もうれしくて、今日自分があげたばかりのリングがきらきら光るカノンの右手をしっかり握ってからたくさんの人たちと丸いテーブルの間をするする縫って歩く。自分では当たり前だと思っていることでも、こうやってさりげなくエスコートしてくれるところがすきだとカノンは笑った。

「ジョージ、わたしエヴァンズさんにあいさつしに行かないと」

フレッドとアンジェリーナと合流してチェリーが浮いたエメラルドグリーンのカクテルをボーイから受け取ってカノンに渡すと、カノンが僕のタキシードのはじっこを少し引っ張って言った。それもそうだ、招待してくれたパーティーの主催者にあいさつをするのは当たり前だと思ってきょろきょろまわりを見回すと、いきなりサロンに小さく笑いが起こった。何事かと思って声がする方をじっと見つめると、僕の視界に入ったのは赤いコートを着て真っ白な口髭の…え、サンタクロース?

「あ、エヴァンズさん」
「メリークリスマス、カノン、来てくれてありがとう」

にこにこ笑って握手するカノンとエヴァンズさんをぽかんとした表情のままで見つめる。だって、カノン、きみ、エヴァンズさんがサンタクロースだなんて一言も言ってなかったじゃないか!目をぱちぱちさせていると、エヴァンズさんのハリーよりも深い緑色の瞳がくるんと振り返って僕を見た。瞬間、心臓が大きく波打ったように跳ねて、あれ?このひとどこかで…

「カノンのご友人方もようこそいらしてくださった、今夜はどうぞ楽しんでいってくだされ」

そう言ってにっこり笑うエヴァンズさんに、僕はひとり気づかれないように眉間にしわを寄せた。どこだ?いったいどこでこのひとを見た?たくさんある頭の中の引き出しを次々と開けて思い出そうとしていると、きょとんとした顔のカノンが僕の顔を下からのぞき込んだ。

「ジョージ?」

長い睫毛をぱちぱちと上下させるカノンに「なんでもないよ」と言って頭をぽんぽんしてやると、カノンはうれしそうににっこり笑った。その時なにかがぴんときて心臓がまた大きくゆれた。そうだ、思い出した。エヴァンズさん、あのひとは

「あのさ、カノン――」
「カノン!そろそろ時間よ!」
「うん、いま行くわアンジー!…ジョージ?なにか言った?」
「…いや、おわったら話すよ」
「そう?」
「ああ。ほら、行こう、パフォーマンスに遅れる」
「ああ!そうだったわ」

「がんばろうね」と言ってにこにこ楽しそうに僕の手を引くカノンにつられて笑う。そうだ、今日はせっかくのクリスマスパーティー。たくさん楽しんで、それからここにいる人全員に楽しんでもらわなければ。なぜならそれがたとえマグルでも、人々に笑顔を届けるのが我らがWWWに勤める者の使命だからである。きらきらクリスマスツリーのてっぺんについた大きな星が輝く。それと同じくらい輝くカノンの瞳を見たあとにぐるりとまわりを見てエヴァンズさんの姿を探す。赤いサンタクロースの恰好をした、深い緑色の瞳のあのひとと、もう一度ゆっくり話がしたかった。

「相棒ー!」
「ああ、今いく!」


100309

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