「「許せジョージ」」
「えっ」

夕方、ソファに座ってうつらうつらしているジョージに向かってフレッドと一緒に催眠スプレー(試作段階)を浴びせると、ジョージはびっくりしたような顔をしたあとにゆっくり目を閉じてぱったりと気を失った。この出来栄えからすると、この催眠スプレーがWWWの店頭に並ぶまでそう時間はかからないだろうなあ。パーティーまで、あと30分のことだった。







NO CALL
NO LIFE








「ほんと、あなたたち最高よ!」

エヴァンズさんのお城のとある一室、なにも知らないジョージに催眠スプレーを浴びせてここまで連れてきたことを話してアンジェリーナと2人でくすくす笑った。実はエヴァンズさんのご好意でわたしの友人もパーティーに招待していいことになっていて、わたしはジョージとフレッドとアンジェリーナを誘うつもりでいた(リーはデートがあるらしい)。それを早速フレッドに伝えたところ、わたしにあたった罰として(※13話参照)『ジョージにはあえてなにも教えずに当日気絶でもさせていきなりパーティー会場に連れていってやろう、ついでに催眠スプレーの効果も試せる』とフレッドが提案したのだった。作戦は見事成功、そして冒頭に至る。ホグワーツの時に同じ部屋で過ごしていたせいか、何の恥じらいもなしにポイポイ服を脱いでいくアンジェリーナはあいかわらずナイスバディだ。長い髪を高いところでひとつにまとめたアンジェリーナは、シャンパンゴールドのマーメイドラインのドレスを選んで着ると、つかつかとわたしの方に歩いてきた。

「カノン、悪いんだけれど背中のファスナーを上げてもらえないかしら?」
「うん、いいよ…はい、できた!」
「ありがとう」
「うわあアンジー、すっごいきれい!」
「そうかしら」

アンジェリーナはふふふと笑いながら胸下に巻かれた黒いリボンとおそろいの黒いロンググローブをはめて大きな鏡の前でくるんとまわった。ホルターネックのせいか背中が大きく開いていていつにも増して色っぽいです、アンジェリーナさん。

「ほら、カノンもはやくしないと遅れるわよ」
「あっ、そうか」

時計を確認したあとにあわあわしながら鏡台のイスから立ち上がってハンガーからドレスを外す。日本でいうサクラ色のふわふわしたドレスはアンジェリーナもイチオシの一着。わたしがすきなエンパイアラインのこのドレスは、ビスチェからオーガンジーのドレープが流ていて、セパレートになったパフスリーブが二の腕のぱよぱよお肉もカバーしてくれる優れもの。髪の毛には魔法できらきら光る雫をいくつもつけて、仕上げに大きなお花を斜めにのせた。アンジェリーナの隣に行って同じように鏡の前でくるんとまわって全身を確認、うん、大丈夫。

「カノンってば、かわいすぎるわ!」
「そんなことないよ」
「ああ、これがジョージにあんなことやこんなことされるって考えると…」
「お願い、考えないで」
「冗談よ」

2人してくすくす笑ったあとに部屋を出て、アンジェリーナはパーティー会場に、わたしはフレッドとジョージのいる部屋に向かった。こんこん、とわたしたちがいた部屋の斜め前の部屋のドアをノックすると、しばらくしたあとに光沢のあるチョコレートブラウンのタキシードを着たフレッドが出てきた。なんていうか、かっこよさに磨きがかかったよ、フレッドくん。

「おうカノン」
「フレッド、準備できたよ」
「こっちもオッケーだぜ、気がついた時のあの相棒の顔、2人にも見せたかったぜ」
「それはぜひとも見てみたかった」
「また今度、な。それにしても、似合うな、カノン」
「ありがとう、フレッドもかっこいいね」
「当然さ、アンジェリーナは会場かい?」
「うん、アンジー色っぽいよ」
「まじかよ」
「まじだよ」

ニヤッと笑ったフレッドのお腹にパンチを一発お見舞いすると(だって今ぜったいいやらしいこと考えた!)、フレッドはそれをひょいとかわしてにっこり笑ったあとにパーティー会場に向かった。まったく、アンジーが心配だわ、ほんとうに。

「カノン?」

すぐ側で声がしてくるんと振り向くと、フレッドと同じ光沢のあるチョコレートブラウンのタキシードを着たジョージがいて、そのあまりのかっこよさにわたしは思わずジョージのお腹めがけて抱きついた。廊下なんて人目につきそうなところではあんまりこういうことをしないわたしを、ジョージはびっくりしながらもきっちり受け止めてくれて、その長い腕がわたしの背中にまわされた。

「ジョージ、かっこいい」
「カノンだって、すごくきれいだ」
「ありがとう、びっくりした?」
「それは今いきなり抱きついてきたこと?それとも僕に催眠スプレーを浴びせて半ば無理矢理パーティーに連れてきたこと?」
「両方」
「そりゃあ、びっくりしたさ」

そう言ってにっこり笑うジョージはどうやら怒ってはいないらしい、つられてへにゃりと笑うとジョージはわたしのリングのはめられた右手を取ってふわりと微笑んだ。あ、今の顔、すきだなあ。

「いきますか」
「うん!」


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