次の日、ジニーに肩を揺さぶられて起きると、部屋にはたくさんのプレゼントが積み上げられていた。今日は12月25日、クリスマスパーティー当日。







NO CALL
NO LIFE








黒いミニスカートの上におばさまからのプレゼントのパステルピンクのフード付きカーディガンを羽織ってニーハイソックスを履く。ジニーのぴょんと跳ねた髪を魔法で直してあげたあとに1階に降りると、ハリーとロンを除く全員がそろっていて、ジニーと声をそろえて「メリークリスマス!」と言うとみんなはにっこり笑った。フレッドとジョージとわたしの3人でプレゼントした三角ぼうしと金色のネックレスを身につけたおばさまからのハグを受けている間に、ジニーはテーブルのビル兄さんの方に行ってしまって、そのすぐあとにハリーとロンがのろのろと降りてきた。

「カノン、こっち来いよ」

わたしに向かって手招きをするフレッドとジョージの方に歩いていくと、2人はわざわざ長いソファの端に寄ってわたしが2人の間に座れるようにしてくれた。お言葉に甘えてぽすんとそこに座ると、同じくおばさまお手製のカーキのセーターを着たフレッドとジョージはきらきらと笑った。

「「メリークリスマス、カノン」」
「メリークリスマス、2人共、きのうどこに行ってたの?」
「村だよ、見てたの?」
「ジニーの部屋の窓から見えたんだよ」
「そう、あっ!カノンのカーディガン、フード付いてるじゃん」
「俺たちのはイニシャル付きだけどな」
「こんなことしなくても俺たちゃ自分の名前くらいわかるぜ」
「「グレッドとフォージさ!」」
「いつかのクリスマスと同じこと言ってるわ」

それからのクリスマス・ランチは明らかに去年までのものとは違っていた。フラーと結婚することが決まっているビル兄さんはフラーに七面鳥を食べさせてもらっていたし、招待をしたら必ずと言っていいほど来てくれるトンクスがいない、それからハーマイオニーも来ていない(ロンとうまくいっていないんだとジニーから聞いた)。それよりもなによりも、最近はすっかり家族との間に深い溝ができてしまっていたあのパーシー兄さんが大臣と一緒に現れたのだ。久しぶりに見たパーシー兄さんにびっくりして両脇を見ると、フレッドもジョージもおじさまと同じ硬い表情でパーシー兄さんのことを見ていた。パーシー兄さんと大臣が帰ったあとも家の中はなんとなく変な空気で、今1階に残っているのはわたしとジョージだけだった。わたしが杖をくるくる振って食器を洗っている間にジョージはキッチンのテーブルに頬杖をついてもう片方の手でおばさまの料理本をぺらぺらめくっていた。すっと通って高い鼻に少し伏せられた長い睫毛、むかつくくらいかっこいいジョージの横顔をシンクに寄りかかるようにして見ていると、それに気づいたジョージはなにを思ったのかニヤッと笑って両腕を大きく広げてみせた。

「ほら」
「うん?」
「だから、ほら!」
「なに?」
「おいで!」

そう言ってにこにこ笑うジョージにわたしの顔はぼんっ!とあつくなって、「いくかぼけ!」と言ってぷいっと流しに向き直った。2人きりの時だとわりと大丈夫なのだけれど、こう、いつどこでだれが見ているかもわからない状況でのハグはどうも照れてしまう。うしろで可笑しそうにくすくす笑っているジョージが、にくい。はあっとため息をひとつつくとちょうど洗い物がおわったらしくて、杖をもうひと振りして食器をもとに戻した。

「カノン」

笑いが止まったジョージに呼ばれてくるんと振り向くと、ジョージは今度は立ち上がって両腕を広げて小首をかしげていた。だけどその顔はさっきの卑しい笑顔じゃなくてもっとふわふわした笑顔で、どきどきうるさくなる心臓をおさえつつまわりをきょろきょろ見回して誰もいないことを確認したあとに、わたしはジョージの腕に包まれた。ジョージはわたしをぎゅうっと抱きしめたあとにわたしの髪をゆっくりすいて、その時ふわりと香ったジョージの香水のにおいがわたしの頭の中までいっぱいにした。

「ねえカノン」
「なあに」
「俺まだ、カノンにプレゼントあげてないよ」
「ああ、そうだったかも」
「ほんと、そういうの気にしないね」
「物より思い出だよ、ジョージくん」
「でも物だって大切だ」

そう言うとジョージはジーンズのポケットから杖を出してわたしの片方の手のひらをぽん、ぽん、ぽん、と3回たたいた。すると、これまたぽん!とかわいい音をたててわたしの手のひらの上に小さなオフホワイトの正方形の箱と小さなバラの花がひとつ現れた。

「あけてみて」

ふんわり笑うジョージに促されるままきれいに巻かれたアイスブルーのリボンをするするほどいて箱を開けると、中から出てきたのはシンプルなシルバーのきらきらしたリングで。ジョージは小さなダイヤがちりばめられたそれを箱の中から取り出すとわたしの右の薬指にはめた。わたしの指にぴったりはまったそれをしばらくぽかんと見たあとにあわててジョージを見上げると、ジョージははにかんだように笑ってみせた。

「俺の意思表示さ、今はまだ未熟だし左にははめてあげられないけど、いずれは、ね」

そう言ってジョージはくるくる遊んでいたわたしの髪の毛を一束掬ってそこに唇を寄せたあとにジョージの水色の瞳がまっすぐわたしを見つめた。

「気に入った?」

返事をする代わりにジョージのお腹に腕をまわしてぎゅうっと抱きつくと、ジョージの長い腕がわたしの背中にまわった。頭上でくすくす笑うジョージが、すごくにくくて、すごくいとおしい。わたし、こんなにしあわせでいいのかなあ。


100306


たくさんのありがとうと大好きを、きみに。

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