漏れ鍋の暖炉から隠れ穴へと向かう、今日はクリスマス・イヴ。クリスマスパーティーまでは、あと1日。







NO CALL
NO LIFE








「なにかおっしゃいましたかね?」

キッチンに立ってハリーと一緒にちまちまと芽キャベツの外皮を剥きながら議論をしていた時のこと。話がちょうど『破れぬ誓い』からフレッドの左ケツになりそうになったところでフレッドの声が割り込んできて(噂をすればなんとやら、である)ナイフと芽キャベツを手に持ったまま振り返ると、ニヤニヤ顔のフレッドとジョージがキッチンに入ってきた。

「あああー、ジョージ、見ろよ。こいつらナイフなんぞ使ってるぜ。哀れじゃないか」
「あと2ヶ月ちょっとで、僕は17歳だ。そしたら、こんなの、魔法でできるんだ!」
「しかしながら、それまでは」

フレッドの言葉にカチンときてそう言い返すと、ジョージがキッチンのイスに座ってテーブルの上に足を乗せながら言った。

「俺たちはこうして高みの見物。君たちが正しいナイフの――ウォットット」
「おまえたちのせいだぞ!」

ナイフで切ってしまって血の出た親指を舐めながらきょろきょろまわりを見てみても、やっぱりというか彼女の姿はなくて、こんなのカノンが注意してくれれば一発で2人がいなくなるのに!と思って深くため息をついた。
それから話はなぜかラベンダーのことに変わって、茶化してくる双子にイラッとして芽キャベツを剥いていたナイフを投げつけるとちょうどママがキッチンに入ってきて、フレッドはめんどくさそうに杖を振って(一体どこから出したんだ!)ナイフを紙ひこうきに変えた。わーお、グッドタイミングだぜ、ママ。

「ロン!」

「ナイフを投げつけるところなんか、二度と見せないでちょうだい!」と怒るママの言葉にうなずきつつもこっそり「見つからないようにナイフを投げる」宣言をすれば、隣にいるハリーが少し笑ったから肩をすくめてみせた。

「フレッド、ジョージ。リーマスが今晩やってくるの。それで、2人には悪いんだけどね、ビルをあなたたちの部屋に押し込まないと」
「かまわないよ」
「それで、チャーリーは帰ってこないから、ハリーとロンが屋根裏部屋。それから、フラーとジニーとカノンが一緒の部屋になれば――」
「そいつぁ、ジニーにとっちゃ、いいクリスマスだぞ」

フレッドの呟きにまったく同感だと思った。こりゃあジニーにとってはすばらしいクリスマスになるだろうな、カノンも一緒の部屋っていうのが唯一の救いだろうけどね。

「さあ、それじゃ、ジョージ、出かけるとするか」
「2人共、なにするつもりなんだ?」

ママがキッチンからいなくなったあとにそう言ったフレッドをすかさず呼び止める。僕たちがマグル方式で芽キャベツの外皮を剥いているのを見ておきながら手伝ってくれないなんて!2人がちょっと杖を使ってくれたら僕とハリーも自由になるというのに!思ったことをそのまま言ってみても、フレッドに(ふざけた)まじめな口調で断られた。なんでだ!

「魔法を使わずに芽キャベツの剥き方を学習することは、人格形成に役に立つ。マグルやスクイブの苦労を理解できるようになる」
「それに、ロン、助けてほしい時には」

ひらひらとジョージが紙ひこうきを投げ返しながら言った。

「ナイフを投げつけたりはしないものだ。後学のために言っておきますがね。俺たちは村に行く。雑貨屋にかわいい娘が働いていて、俺のトランプ手品がすんばらしいと思っているわけだ…まるで魔法みたいだとね」

そう言ってジョージはイスから立ち上がって勝手口から外に出ていった。それを見たフレッドはくつくつ笑いながら肘でハリーのことを小突いていた。何事かと思って眉間にしわを寄せながらフレッドを見つめると、フレッドは笑いすぎて浮かんできた涙を指で拭いながら言った。

「あいつはああやって、もっともらしいこと言ってますけどね、ほんとうは拗ねてるだけなんだぜ。ここに帰ってきてからというものの、カノンはジニーに取られっぱなしだからな。村に行くのだってカノンの両親の墓参りが目的だし、雑貨屋に行くのだってカノンへのクリスマスプレゼントを買うためなんだぜ」

相棒、かわいい。相棒、笑ける。なんて言いながら手をひらひら振って去っていくフレッドの背中を見送ったあとに、僕と同じくぽかんとした表情のハリーと顔を見合わせる。

つまり、ジョージは、カノンに…メロメロ。

ハリーと2人してニヤッと笑ったあとに芽キャベツの山に向き直る。なんだ、ジョージってば案外かわいいところあったんだな。明日ぜったいカノンにジョージからのプレゼント見せてもらおう。


100227

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