シャワーを浴びてきたばっかりのほかほかのフレッドがキッチンに入ってきて、わたしはできあがったポトフを3人分器に装った。ジョージは、晩ごはんに来なかった。







NO CALL
NO LIFE








「で、なにがあったんだよ」

食後の紅茶を飲んでいる時にフレッドが聞いた。いつもと違ってわたしの目の前のジョージの席に座ってまっすぐわたしの目を見てくるフレッドに、わたしは完全に目を泳がせてしまって、今さら遅いのはわかっているけれどごまかそうと思って残ったパンにかけたタータンのクロスを指先でいじった。それを見たフレッドは、小さくため息をついたあとにテーブルに頬杖をついて空いた手でわたしの頭をぽんぽんたたいた。

「まったく、わかりやすすぎだ」
「…ごめん」
「ん。で、けんかしたの?」
「けんかっていうか…うん、わかんない」
「わかんない?」

わたしの髪をくしゃくしゃしながらきょとんとした顔をするフレッドに、手元の紅茶のカップを両手で包み込んで俯く。紅い紅茶に映った自分の顔はすごく暗い、わたし今すごく変な顔してるなあ。ぽつぽつ下を向きながら話しはじめる。漏れ鍋でのこと、ジョージにそのことを話したらジョージの様子がおかしくなったこと、ジョージがイライラしている理由がわからないこと。フレッドはカップに添えられたわたしの手に触れたまま、時々相づちを打ったりわたしの髪をくしゃくしゃにしたりしてしっかり聞いてくれた。いつもはへらへらしてるくせに、こんな時ばっかりしっかりしてるなんてずるい。こういうところ、同い年なのにお兄ちゃんみたいですごく安心する。調子にのるだろうから本人には言わないけれど、ほんとうはすごく感謝してるんだよ、フレッド。ぜんぶ話しおわって顔を上げると、フレッドの眉間には少しだけしわが寄っていて、でもすぐに笑ってさっきよりも強くわたしの髪をぐしゃぐしゃにした。いつものいたずらな笑い方じゃなくて、たまに見せるすごく優しい笑い方。

「ジョージのことは俺に任せて」
「でもフレッド、どうしてジョージは」
「おっと、それは相棒から直接聞いてくれ」

そう言うとフレッドは、すっかり冷たくなってしまった紅茶を一気に飲み干してドアの方に向かった。なにがなんだかわからないという顔でフレッドを見ると、フレッドはくるんと振り返ってにっこり笑った。いつもと同じ、少しいたずらっぽい笑顔で。

「ひとつだけ言えるのは、相棒はカノンのことが好きで好きでしょうがないってことさ」

一言そう残してカノンに背中を向けたままひらひら手を振ってダイニングを出る。ドアを閉める時にこっそり見たカノンは、泣きそうな顔のまま少しびっくりしていたようだったけれど、俺が言ったことはまあ事実だしな。いくらトムの紹介とはいえ、自分の知らないところで彼女が知らないマグルのおっさんに声かけられてちゃ、そりゃあ心配だわな。相棒の気持ちもわからなくないが、それでイライラしてカノンにあたるのはだめだよなあ。素直になればいいものを、まったく世話の焼ける相棒だぜ。とんとん階段を上がって自分の部屋の前を通り過ぎてジョージの部屋のドアの前に立つ。向かい側の壁に寄りかかって腕を組みながら、今この部屋の中ででかい身体を小さく丸めて頭を抱えているであろう相棒の姿を想像すると、少し可笑しくなって1人でくつくつ笑った。

「さて、どう言ってやろうかね」

かわいいかわいい幼なじみと弟のために、お兄ちゃんが一肌脱いであげようじゃないの。


110122

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