「なんてかわいいお嬢さん、ぜひとも私の城のパーティーに来てはいただけませんか?」
「はあ…」







NO CALL
NO LIFE








「それで!?OKしたのか!?」

ばんっ!とすごい音をたてながらジョージが机に手をついて立ち上がった。びっくりしてジョージの目を見ると綺麗な水色の瞳はまっすぐわたしを見つめていて、少し怒っているようなジョージの顔がこわくて目線を下に移すと、さっきの衝撃で紅茶が少しこぼれていた。

さかのぼること約2時間。『例のあの人』が戻ってきたせいですっかり活気のなくなった雪の積もるダイアゴン横丁に買い物にでていた時のこと。買い忘れはないかしらとバスケットの中身を確認しながら歩いていたわたしのところに1羽のフクロウが飛んできた。フクロウはくわえていた手紙をわたしのバスケットの中に落とすと空中で2、3回旋回したあとにどこかに飛んでいってしまった。差出人を確認すると『漏れ鍋』のトムからで、申しわけないけれど店に寄ってくれと書いてあった。ちょうど買い物もおわったしそのまま漏れ鍋に向かうと、わたしに気がついたトムがカウンターをでて入口まで出迎えてくれた。ここも少し前まで人がいっぱい入っていたのに今ではがらんとしている、それだけみんな『例のあの人』の復活と存在を恐れて怯えているのだろう。

「こんにちは、トム」
「ああミス・ハプシュタイン、よくぞ来てくださった」
「買い物もおわったし、ちょうどよかったわ」
「あいかわらずお優しい」
「それで、なにかご用が?」
「おお、そうですとも。あの方がぜひともあなたを紹介してほしいと」

そう言われてカウンター席の方を見ると、上等そうなブラウンのコートを着たおじいさんが1人座っていた。そのひとはわたしに気づくとにっこり笑って隣に座るように促した。カウンターの中に戻るトムのあとについておじいさんの隣に座ると、白い口髭がサンタクロースを思わせるおじいさんはハリーよりも深い緑の瞳を細めてわたしにしわだらけの手を差し出した。

「はじめまして、お嬢さん」
「はじめまして…」
「突然来てもらって申しわけなかったね。私はエヴァンズだ、マグルだがね」

トムにもらった熱いココアを飲みながら話を聞くと、エヴァンズさんは親魔法使い派のマグルで、毎年クリスマスには自分の誕生会も兼ねて、親魔法使い派の仲間たちと魔法使い1人をゲストに呼んでパーティーを開くのだとか。そのパーティーを2週間後に控えた今日、前からの知り合いのトムにゲストを紹介してもらうべく漏れ鍋にやって来たところ、トムがわたしの話をしたらしい。つまりは、そのパーティーに今年はわたしに出てほしい、と。いきなりのおはなしに頭がぐわんぐわんしていると、エヴァンズさんはわたしの手を両手で握って目をきらきらさせて笑った。

「今年はぜひ君にゲストとして来ていただきたいのだよ」
「でもわたし、そんなすごいパフォーマンスとか…」
「いやいや、君はただその場にいて魔法のひとつやふたつ見せてくれるだけで構わない」
「はあ…」
「この通りだお嬢さん、もう君だけが頼りなんだ」

そう言って頭を下げるエヴァンズさんにあわてて頭を上げてもらうと、わたしは少し考えたあとに承諾の返事をした。トムの紹介だし、エヴァンズさんもいいひとそうだし、大丈夫だよね。なにより、エヴァンズさんのこのうれしそうな顔を見たら断れなかったのだ。

「それじゃあお嬢さん、2週間後のクリスマス、夕方6時にまたここでお会いしましょう。なに、もちろんドレスはこちらで用意しますよ、服装はそのままで」
「あの、エヴァンズさん」
「なにかね?」
「…カノンです。わたしの名前、カノン・ハプシュタインといいます」
「……そうか。ではカノンさん、また後日」
「はい」

そのあとお店に帰ってジョージにこのことを話した、そして冒頭に至る。
ジョージは紅茶がこぼれているのに気づくと、ばつの悪そうな顔をして一言謝った。ぐしゃぐしゃ真っ赤な髪をかきむしるのはジョージがイライラしている証拠、でもなんでジョージがイライラしているのかがわからない。理由を聞こうとして開きかけた口はジョージのため息で止まって、ジョージはそのままわたしの目を一度も見ないで部屋に戻っていってしまった。窓の外でぱらぱら降っていた雨は、いつの間にか雪に変わっていた。


110115


親魔法使い派マグル…魔法使いの存在を認めて共存していこうと考えているマグルの総称、魔法使い大好き

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