「落ち着けアンジェリーナ!」
「落ち着かないわ!」

ぎゃあぎゃあアンジェリーナがフレッドのことを殴りつけている光景がなつかしくてくすくす笑いながら見ていると、ふいにジョージに右手を握られる。しーっと人差し指を唇にあてて笑うジョージに小首をかしげると、にこにこ笑うリーに背中をぐいぐい押されて、そのままそっと3人でその場を離れた。







NO CALL
NO LIFE








「ねえ、どこにいくの?」

手をつないだままのジョージとにこにこ笑うリーとの間に挟まれて入口に向かってホームを歩く。リーは頭のうしろで両手を組んだ状態でうしろをちらっと見たあとにわたしに向かってウインクをひとつした。

「2人きりにしてやろうと思ってさ」
「さすが俺たちって気が利くよな」

くすくす笑うジョージにつられてうしろを振り向くと、殴ることをやめたアンジェリーナがフレッドの腕の中にすっぽりおさまっていた。なるほど、そういうことか。ジョージとリーの意図を理解してニヤッと笑うと2人もいたずらっぽくニヤッと笑って、そのまま3人でニヤニヤしながらキングズ・クロス駅を出た。

「リー、ご両親は?」
「外で待ってるって…おっと、うわさをすればだ!」

ぶんぶんリーが手を振る方向を見ればリーと同じ黒人の男女がいて、ぺこりと下げられた頭にあわてておじぎを返すとリーはにっこり笑った。

「じゃあ俺行くな!今度店にいちゃもんつけに行くから!」
「うん、まってる」
「ジョージも、あんまりカノンに如何わしいことすんなよ!」
「いか…っ!?」
「うるさい、リーには関係ないだろ」
「なにを言う、関係大有りだぜ!カノンは俺の癒しだからな!」
「リー!」
「ははっ、じゃーな!」

きらきら笑って手を振りながら去っていくリーを見送ったあとにわたしとジョージはにっこり笑って、ジョージは繋いでいた手をいわゆる恋人繋ぎに変えた。

「俺たちはどうする?このままデートでもしてく?」
「だめだよ、ベリティさんに悪いもの」
「ちぇっ、やっぱだめか」

そう言っていたずらっぽく笑うジョージの手をぎゅっと握るとジョージもぎゅって握り返してくれて笑った。わたしの手よりもずいぶん大きいジョージの手は少し骨張ってごつごつしているおとこのひとの手。悔しいことに指は細くて長いし、在学中はクディッチの練習で肉刺が絶えなかったのも知っている。がんばった時ほめてくれるのも、落ち込んだ時励ましてくれるのも、ジョージのこの大きな手で、この手で頭をぽんぽんされるのがわたしはとってもすきだ。

「わたし、ジョージの手すきだなあ」
「手?」
「うん」
「手だけ?」
「まさか、ぜんぶすき」

にこにこ笑いながら言うとジョージは一瞬ぽかんとした顔をして、自分の言ったことを思い出してはっとした時にはもう遅くて、ジョージは可笑しそうにくすくす笑っていた。

「おまえ、時々すっごいはずかしいこと言うよなあ」
「や、やっぱり今のなし!」
「もう手遅れだよ。それともなに、うそなの?」
「う、うそじゃないけど…」
「ああもうなにこの子、かわいいなあ!」
「わああ!抱きつくな変態!」
「あっ、今のはひどいぜ!」
「こんな街中で大のおとこがはずかしいわあ!」
「照れない照れない」
「照れてないっ!」

ぷいっと逆方向を向くとジョージはくすくす笑いながらわたしの頭をぽんぽんして、だから!わたしがこれに弱いって知ってるくせに!確信犯めばかやろう。ぎゅうっと握られた手を握り返すとジョージは満足そうににっこり笑って、そのままさりげなく建物と建物の間の細い道に入ってわたしたちは『姿くらまし』した。


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