時間が余ったからくるくる巻いてみた髪は、意外にも好評で少しだけ照れくさい。ふわふわのティアードスカートをゆらして愛用のリボンがついた赤いパンプスを鳴らしながらマグルの世界に繋がっている入口の前でくるんと振り返る。いつもきびきび動きまわっているベリティさんが、わざわざ漏れ鍋までお見送りに来てくれてことがうれしくてへにゃりと笑うと、ベリティさんも少しだけ笑った。 「お店の方は任せてください」 「ありがとうベリティさん」 「ミスター・ウィーズリーとミスター・ウィーズリー、くれぐれも外で悪戯をしないように」 「「わかってるよ」」 「それじゃあ3人共、気をつけて」 「いってきます」 NO LIFE ガタゴトとマグルのタクシーに乗ってやってきたのはキングズ・クロス駅。今日は1学年のおわりの日、ホグワーツのみんなが帰ってくる日なのだ。いつものように歩幅を合わせて歩いてくれるフレッドとジョージの間に挟まれて駅のホームを歩いていると、9と3/4番線につづく柵の前に見慣れた人たちのうしろ姿を見つけて、わたしたちはにっこり笑い合ったあとにその集団に駆け寄った。 「「ママ、パパ」」 「あらフレッドにジョージ、カノンも来てくれたのね」 「こんにちは、おじさま、おばさま」 「さあこれで全員そろったな」 くるんと横を向くとトンクスとリーマスがにっこり笑って手を振ってくれて、マッド-アイはいつも通り厳しそうな顔をしていたけれど、あいさつをすると片手をあげて返してくれた。今朝ココに頼んだ手紙はちゃんと届いたかしらと思って唸っているとジョージが不思議そうに顔をのぞきこんできて、それを見たフレッドがいつものようにニヤニヤ笑いだしたからフレッドの脇腹にパンチをお見舞いした。 「ロン、ジニー!」 おばさまの声にみんな帰ってきたのだと思って顔をあげると、ロンとジニーと、それから少し元気のなさそうなハリーが順番におばさまのハグを受けていた。ハリーの元気がない理由を、わたしたちは知っていた。シリウスがいなくなってしまったのはとても悲しいけれど、それでもみんながちゃんと生きて帰ってきてくれたことがわたしはうれしかった。ご両親のもとに走っていくハーマイオニーのうしろ姿を見てほっとしていると、ロンがこっちに向かって歩いてきて、フレッドとジョージの服をじろじろ見た。 「それ、いったいなんのつもり?」 「弟よ、最高級のドラゴン革だ」 「事業は大繁盛だ。そこで、自分たちにちょこっとごほうびをやろうと思ってね」 えへん!と胸を張って言うフレッドとジョージに、ぽかんと口を開けたままのロンを見てくすくす笑っていると、ロンがくるんとこっちを向いた。 「おかえり、ロン」 「ただいまカノン、それ、その髪、すごくすてきだ!」 「ありがとう」 「おっと、カノンは俺のだから手だすなよ、ロニー坊や」 そう言ってわたしにうしろから抱きついてきたジョージにロンは顔を真っ赤にして反論して、またもやニヤニヤ笑いはじめたフレッドにはずかしくなってジョージの腕の中でばたばた暴れた。それでも解放してくれないジョージをどうしようかと思っていると、どこからかこつこつと足音が聞こえてきて、次の瞬間にはゴツッという痛そうな音とジョージのうめき声が聞こえた。 「痛ってぇ、だれだよ」 弱まったジョージの腕の中から抜け出してうしろを振り向くと、そこに立っていたのは久しぶりに見た親友で、ジョージを殴ったであろう右手をグーにしたままのアンジェリーナは泣きそうな顔をしていた。 「カノン!」 「アンジ、わわっ!」 ぎゅうっと今度はアンジェリーナに前から抱き締められて、びっくりしながらも背中をぽんぽんたたくとアンジェリーナはついにぼろぼろ泣き出してしまった。 「わた、わたし、心配、したわ!あなたが、い、いなくなっ、てから!」 「…うん」 「いつも、か、勝手に、いな、いなく、なるんだから!」 「ごめんね、アンジー」 アンジェリーナの頭をぽんぽん撫でながらフレッドとジョージを見ると、2人も同じくリーと再会をしていた。口パクで「ばか」と言ってくるリーに謝罪の意味を込めて苦笑を返すと、リーは目に溜まった涙を袖でごしごし拭いた。ほんとうにこのひとたちには悪いことしたなあ。何回もごめんねを言っているとアンジェリーナは涙でぐしぐしになった顔を上げて、いつもみたいにわたしの頭に手を乗せてきれいに笑った。 「でも、ココから受け取った手紙で今までのことは許してあげるわ」 「えっ」 「あれがなかったらわたし、あなたたちを見つけられなかったと思うから」 「でも、」 「いいのよ、わたしたち、親友でしょう?」 そう言ってにっこり笑うアンジェリーナに今度はわたしが泣きそうになって、こっちを見ているフレッドとジョージとリーに顔を見られたくなくてアンジェリーナに抱きついた。 「ありがとうアンジー、おかえりなさい」 101119 拝啓 駅で待っています |