恋は下心、愛は真心
恋をしたことがあるかと聞かれれば普通にある。
トト子ちゃんは恋に入るか?多分『初恋』ではあるんじゃないかな。
手が届かない高嶺の花であり一番傍に女の子。
そりゃあトト子ちゃんは可愛いよ。今でも天使だと思うもん。
でも、あいつと付き合いだして何か違うって思った。
はっきり言わしてもらおう、めっちゃしたい。ナニをとは言わないけどしたい。
ただ、傷つけたくない。泣かせたくない。なんだろうなー、守りたいってやつ?
俺は六つ子のお兄ちゃんだから弟達を守らなきゃっていう気持ちはほんの少しはあるんだけど……ほんとだよ?本当に思ってるよ?
そうじゃなくて一生かけて守りたいというか傍に居たいというか……あーっ!わかんね!もやもやする!

そんな感じで今、俺の家にこいつと二人っきりな訳で。隣で一緒にテレビ観てるんだけどさ。
恋は盲目なんてよく言ったものだ。本当に可愛い。トト子ちゃんと同じくらい可愛い。
あ?さっきからトト子ちゃんトト子ちゃんうるさいって?
しかたないだろ、俺らと一緒に居てくれる女の子なんてトト子ちゃんくらいしかいなかったんだから。
俺がじっと見てたせいかお前はふと俺の方を見た。そして首を傾げ「どうしたの?」と聞いてくる。
それだけで心は踊るし顔は赤くなるし言葉は出なくなる。俺は童貞か!……童貞だったわ。

「いや、あのな、なんというか…」
「うん?」
「か、可愛くてつい、見ちゃった……」

しどろもどろそう言えば彼女も顔を真っ赤にして「そっか、ありがと」と照れ臭そうに微笑む。
もう本当、目に入れても痛くないやこれ。どうしたらいいんだよ。

なんだろう、邪な考えはすごく浮かんでいる。
それでも理性飛ばしたまま事に及びたい訳でもなく、でも愛し合いたくはある。
恋ってこういうものだっけ。こんな葛藤するもんじゃなくて、もっと甘酸っぱい物じゃなかった…?

「お、おそ松君……?」
「へっ!?」
「百面相してるけど本当に大丈夫?あ、今日私いない方がよかったかなレン…?」
「い、いやいやいや!?なんでそうなるの!」
「なんだかんだで家に押しかけちゃったし、ほらおそ松君は兄弟多いからさ……せっかくの一人の時間邪魔しちゃったかなって……」

しゅん、と項垂れる彼女を見て焦りと何故か少しのぞくり、とした加虐心が何故か芽生えた。
今その感情いらなくない!?なんで芽生えたの!?
何度も言うように傷つけたくはない。大事にしたいけど……駄目なんだなー。俺もともといじめっ子だったし。

「あのさ」
「ん?」
「なんかずるい」
「えっ、なにが?」
「俺だけドキドキしててずるい!!」
「ちょ、おそ松君!?」

抱き寄せて彼女の耳に俺の胸を押し付ける。

「すっげえ早いでしょ、俺の心臓」
「えっ、あ、あの……」
「お前ちょっと鈍感なんだよ。何もしないなんて無理に決まってんじゃん。好きすぎてどうにかなりそうなのに」
「おそ松く…」
「好きで好きで、こんな気持ち初めてで、大事にしたいけど泣き顔もみたくて…って言うか全部欲しくて!!」
「ちょっと」
「はっきり言うよ!ヤりたい!!」
「直球きたね!?というかちょっと待って!」

そう彼女が言うとぐいっと小さな手が俺の胸を押して身体が離れた。
もしかしてこれ拒否された?嫌われた?やりすぎた?
そんな事が頭の中をぐるぐるして少し眩暈がする。すると彼女が俺の手を力強く掴んだ。

「うおっ!?」
「おそ松君は私が鈍感だって言ったね?俺だけがドキドキするって言ったね?そんな訳ないじゃない!!」

小さな手に導かれて俺の手が彼女の胸へと到達する。

「ほら、私の心臓も早いでしょ?私だっておそ松君に会う度ドキドキしてどうしようもなかったんだから……っ」

手から伝わる鼓動は本当に早くて、下手したら俺より早いんじゃないかと思う。
ただそれ以上に思うのは……やわらけぇ。ヤバくないか、指動かしたら駄目?ここまで来たら揉みたいんですけど。
というか顕界です。ごめんな。
俺はそのまま開いている方の手で彼女の肩を掴むとそのまま押し倒した。
畳だからそんなに痛くはないだろう。そして覆いかぶさる。

「あっ、うえ!?」
「……お前が悪い」
「なんで!」
「そんな煽られたら押し倒すしかないじゃん。男として」
「そ、そんなの知らな……っ」
「なあ、一つだけ。これだけはわかってほしいんだ」


誰でもいい訳じゃない。お前だからなんだ。
お前が好きで堪らないから身体だけじゃない、心も全部交わりたい。

「わ、わたしも」
「お?」
「私も、おそ松君になら……全部捧げても、いい」

はい、殺し文句いただきました。すっげえ心臓あたりがきゅんきゅんする。
とにかく今は誰も帰ってくるなよ。こういう時に変な六つ子の繋がり発揮するんじゃねえぞ。
そう願いながらぎこちなく、彼女の唇を俺の唇で塞いだ。


きっとお前と出会えたから、こんな穏やかで愛しい気持ちに出会えたんだなぁって思うんだ。


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タイトルは「jachin」様より
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