だきしめてほしい、全力で




「ん」

ソファーで隣に座っていたMZDがいきなりこっちに両腕を広げてくるのでとてもびっくりした。

いつも通りMZDの家に遊びにきて、いつも通り何の他愛もない話をしてくつろいでいたら急に真顔でこれである。

「あの、MZD?」
「なんだ」
「この手は何ですか」
「見ればわかるだろ?」
「わかんないよ」
「えー、お前そこまで鈍感じゃないだろ」

いや、わかるのだ。多分彼は『俺の胸に飛び込んでこい』的な事を言っている。やりたいことはわかるが、疑問はそこじゃない。

「……なぜ今?」
「したくなったから」
「えぇー……」
「腕が疲れてきたから早くしてくれると助かる!」

たしかに上げたままのMZDの腕が小刻みにぷるぷる震えはじめた。ちょっと面白い。

「んもー、しょうがないなぁ」

私はいそいそとソファの上に登り、彼の膝へと跨がった。そして、私の動きと共に正面へと体を動かしてくれたMZDへおもいっきり抱き着く。すると彼もちゃんと私の背中へと腕をまわし軽くぽんぽんと叩く。

「あー、やっぱりお前いい匂いするなぁ」
「恥ずかしい事言わないでよ。なんならMZDだって落ち着く匂いするもん」
「なんだ、win-winじゃねえか」
「いいけど、本当どうしたのいきなり」

上体を離してそう問えば少し照れたように彼はそっぽを向いた。

「まぁ、なんだ。ただ甘えたかっただけだ」

そう言う神様がなんだか見た目相応の男の子に思えた。
不器用な彼の愛おしさに、おもわずもう一度ぎゅーっと抱きしめて頭を撫でる。

「甘えていいよ。うんと甘やかしてあげる」
「……そっか」

ありがとな、小さく聞こえた声は確かに嬉しそうな少年のものであった。


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タイトルは「シュレーディンガーの恋」様より
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