愛されることを知った喜び
「欲しかった花ってこれか?」
「そうそう!綺麗でしょ!」
二人で寄った小さな花屋。私はどうしても欲しい花があった。
「ツツジみたいな花だな」
「西洋ツツジとも呼ぶくらいだからねー」
ふふ、と笑うと明王は頭を掻きその花が咲き誇る鉢へと手を伸ばした。
「今回は俺が買ってやるよ」
「えっ、本当?」
「あまり物買ってやれねぇから。これくらいはな」
「…ありがとう」
ちょっとした優しさに笑みがこぼれる。
付き合う前は考えられなかったこの光景はまさに幸せそのものだ。
会計を済ませる彼の背中を私はずっと見つめていた。
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「しっかし、いきなり花が欲しいとかどうしたんだよ」
鉢ごと買ったその花を両手で抱えながら隣の私を見る明王。
「んー?いいじゃない、女の子だもん」
「女の子、ねぇ?」
「なによ」
「いーや。こんなに可愛らしい趣味がお前にあったとはなぁって」
「ちょっとそれ失礼!」
軽くパンチしてみれば笑いながら少しよろける彼だがしっかりと花は持ったまま。
「なぁ、なんでこの花が欲しかったのか教えてくれよ」
そっと耳元で囁く彼の声に少し顔が赤くなりながら私は咳払いを一つ。
「…花言葉がね、素敵だなあって」
「どんな?」
「自分で調べて!恥ずかしいから!!」
そう、何気なく調べた花言葉が私たちにぴったりと思ったところから始まった。
もともと私は花にそこまで興味を示さなかったが、本当に何気なく本屋で手に取った花の図鑑にこの花が載っていたのだ。
明王と出会って私の世界は変わり、今に至るまで衝突なんてものもしたが、それでさえも愛おしい時間で。
「ねぇ、明王」
「おう?」
「…愛してる」
「……なんだよいきなり」
「言いたかったの。今どうしても」
「そうか」
彼はあまり言葉にしてくれないけど、同じ気持ちだったらとても嬉しい。
自惚れかもしれないけど、私はこの花に言葉を乗せるよ。
花の名前は『アザレア』
花言葉は────