本当の気持ち、見せてみたい
「好きだ」

そう、貴方から言われた時嬉しくてたまらなかった。
それなのに私の可愛くない口から出た言葉と言えば────

「      」

その後、頭が真っ白になって自分が何を言ったかもわからなくて。
ただ、貴方の顔を見て貴方──カラ松を傷つけた言葉だって事だけは理解できたの。
それでも貴方は優しく言ってくれた。

「ごめんな。傷つけるつもりは、なかったんだが…」

傷ついたのは貴方でしょう、うそつきだ。
私も貴方も。
そこから私は貴方との間に見えない黄色い線を引いた。
貴方だけ通さない、そんな妄想。



でもね、どんなに線を引いたって貴方はそれを越えてくるの。
私は独りでいたいのに、こんなどうしようもない、人の好意にも答えられない私なんて。
私を傷つけないように、優しく、それでいて少し急かすように。

こんなの私の妄想だって、甘えてばかりの勝手な想像だって、そう信じていたかったのよ。
それでも貴方の言葉は暖かくって、そんな言葉が私の心に溢れかえる。

お願い、おねがい、そんな泣きそうな顔しないで。
私のせいなのはわかっているの、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
謝罪の言葉は胸の内に溜まるばかりで言霊に変わりゃしない。
私は、ただカラ松に笑ってほしいだけなんだ。
かっこつけてない、無邪気な瞳で笑いかけてほしいだけなの。

こんな私なんか手放してよ。一回こっ酷く振ったのに。
それなのに、こんな優しくして。
本当は「私もカラ松が好きだよ」って言いたかったのに。なんで反対の言葉し、か…。

緩やかな体温が私の頬に触れる。
少し骨張った温い両手がが私の両頬を包んだ。

「俺は、お前の泣いてる顔なんか見たくない」

いつのまに私は泣いていたのか。気づきもしなかった。

「…ななし。お前が素直じゃないのは前々から知ってる。だから、もういい」

おねがい

「離れたくないんだ。俺は、ななしと違って反対の言葉なんか言えやしない」

おねがいだから

「もう一回、チャンスをくれないか」

もう

「どうしてもお前が好きなんだ」

私の事なんか

「…お前の隣を俺、にくれないか?」



手放してよ

「こ、こんなに可愛くないおんな、さっさとすててよ…っ。わたし、からまつを、傷つけるだけだ…から…っ!!!」

嗚咽交じりで自分が何かももうわからなくて。

「それでも俺はな」

「お前が好きで好きでたまらないみたいだ」


優しくて痛いよ、カラ松。
心が痛いよ、助けて。

「ななし。また、無邪気な瞳で笑ってくれ」

そういって私の額に自分の額をくっつける彼も少し泣いていて。
でも考えている事は同じだった。

「カラ松が…いいって言うなら……私、わたしもね」


どうやら独りぼっちのかくれんぼは今日で終わりらしい。




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BGM:「とおせんぼ」wowaka feat.初音ミク

タイトルは「ひよこ屋」様より
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