今の僕はきっととても幸せ


「うおー!さみぃー!!!」

扉が開くと同時にそんな声が聞こえてきた。
彼氏だから、という理由で合鍵を持たせはしたが毎日のように転がり込んでくるものだから少し後悔し始めた所だ。

「おそ松いらっしゃーい。明日雪の予報出てるよ」

私は一人用の炬燵に入りながらテレビから目線を外さない。
降る、といってもきっと粉雪がちらつく程度だろう。

「ちょっと、愛しい彼氏をお迎えとかしない訳?」

少しむくれた口調で彼は私の傍まで歩いてくる。
でも私の目線はまだテレビに向けたまま。

「愛しいけど寒さには負けます」

「ななし!俺と炬燵、どっちが大事だ!!」

「炬燵だよ!!!」

「即答かよ!!!!」

「当たり前でしょうよ、炬燵は冬の間だけの相棒だもん」

「俺は!?」

「おそ松はいつでも会えるじゃんニートだし」

「そうじゃないだろぉー…」

声が震えてきたおそ松に流石にからかいすぎたか…と心の中では思ったが、自分は思った以上に炬燵を愛してしまったようだ。
相手はしてあげたいけどこの温もりに甘えていたい、と机部分に顎を置いた。あぁ、あったかい。

すると後ろにいたおそ松が私の真後ろに座った音がした。そして────

「ぅ…ひゃあっ!?」

冷たい、おそらく彼の掌が私のセーターの裾から侵入してきた。
下に着ていたキャミソールすらも捲り上げ、それは直接肌へと触れる。
いきなりの冷たさにびくんっ、と身体が仰け反り変な声まであげてしまった。

「ちょ、やだっ!冷たい!!」

「あったけえー…いい暖房器具みつけたわー」

「私は暖房器具じゃな…ちょっと!お腹揉まないで!!」

「ななしちょっと太った?」

「冬の為の蓄えです!!」

「柔らかい方が好きだけどさー、触り心地いいし」

「くすぐったいし恥ずかしいからやめ……っ」

「いーじゃん、減るもんじゃないし」

「減る!女としての何かが減るって胸を弄るんじゃないよ変態!!」

その手が一際柔らかい部分を確かめるように動き始めたので流石に肘鉄を食らわせる。
うぐっ、と呻き声が聞こえたがすぐにその温かくなった手が優しく私の首元を通り過ぎ、抱き締めた。
足も炬燵の中へと入ってきて傍から見れば…

「二人羽織り?」

「そりゃねえだろ」

おそ松の笑い声が頭上から聞こえる。どうやら機嫌が直ったらしい。
背中に感じる彼の体温に微睡みが襲いかかる。

「おそ松…」

「んー?」

「やっぱりおそ松の方が大事だし愛しいよ」

間延びした声で言えば彼の少し焦ったような嬉しそうな声にならない声が耳に入る。
そして私はそのまま暖かな夢へと誘われるのだ。



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タイトルは「確かに恋だった」様より
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