冷たい指は誰に暖めてもらおう
「さっむーい!」
学校帰り、少女は叫ぶ。
真冬の北海道はとにかく寒い。
いくら毎年の事だと言っても中々慣れるものではないのだ。
「いやぁ、今日は一段と寒いね…凍っちゃいそう」
少女の隣をあるく少年、吹雪士郎は眉を下げマフラーを少し口元へとあげる。
「もー…。手がかじかんで動かないよ……」
はぁー、と自分の手に息を吐きそれを擦りあわせる。
一瞬だが暖はとれなくはない。
それを見ていた吹雪は何か思い付いたかのようにいきなり少女の手をとった。
いきなりのことに唖然とする少女だったが、もしかしたら暖めてくれるのかと期待をよせた。しかし―――――
「つっめたああああああ!?」
そう、吹雪の手は氷のように冷たかった。
慌てて手を離そうとする少女だが、吹雪はがっちりと彼女の掌を掴んで離さない。
「あぁ、君の手の方が暖かいね」
「いや、私寒いです本気で寒いですお願いします離してください」
「えー、寒いからやだー」
ぷぅ、と可愛く頬を膨らます吹雪。その姿は男とは思えぬ程可愛らしいが、今の少女には悪魔にしか見えない。
このまま凍死しちゃうかなぁ、とぼんやり考える少女だったがふと吹雪の手が離れふわり、と首元に柔らかさを感じた。
「僕のマフラー半分貸してあげるから手、繋いでていい?」
ああ、そんな素敵な事を素敵な笑顔で言われたら断れないではないか。確信犯かこのやろー。
「……しょうがないなぁ」
彼には叶わない。そう思った少女でした。