Indian summer day
その日はぽかぽかの小春日和だった。
ハインリヒはソファに座りコーヒーを飲みながら本を読むことが日課となりつつある。
ほかり、とする太陽の匂いに少し眠気を誘われながらもそこにある活字に目を向けていた。
今日はギルモア邸には誰もいないはずだ。ゆっくりと本を読める、とページをめくる。するとリビングの扉が開く音がした。
驚きならその方向をみると、眠そうに眼をこする綾菜の姿が。

「いたのか綾菜。物音もしなかったからてっきりいないものだと」

「…いままで寝てたの」

ふわあ、とあくびをする彼女にはよく見ると寝癖がついていた。
その姿に苦笑するハインリヒ。ソファを少し詰め、隣に座るように促す。
それに答え綾菜はふらふらと彼の隣に座った。

「いままで寝てたって…もう昼じゃないか。寝すぎだぞ」

「だって今日ぽかぽかして、気持ちいい…んだもん」

綾菜の言葉は途切れ途切れで今にも寝そうだ。
ハインリヒはしょうがない、と小さくため息をつき一旦本に栞を挟んで閉じる。
すると立ち上がり、近くにかけてあった膝掛けを持ちソファへと戻った。
そして綾菜の膝にそれを優しくかけるとまた隣に座る。

「眠かったら寝てもいいぞ。肩くらいなら貸してやるから」

それを聞くと綾菜はふにゃりと笑って遠慮なくハインリヒに寄りかかる。
少しすると綾菜の寝息が聞こえてきた。
それにハインリヒは笑うとまた本を読み始めるのであった。


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