Warm starry sky
綾菜はその日の夜、バルコニーから夜空を眺めていた。
都会の真ん中ではなかなか見ることの出来ない星たちが沢山並んでいる。
「綾菜、そんな所にいたら風邪をひくよ」
そういいながらコートを綾菜の肩にかける青年、ジョー。
綾菜は一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった。
「ありがと。ほら、星が綺麗なんだよ」
星空に指差す綾菜。ジョーも綾菜の隣に並ぶと空を見上げる。
「本当だね。冬だから空気も澄んでるのかな」
「うん。それに都会じゃこんな綺麗な星なんて見れないしね」
ネオンや雑踏に紛れてしまう小さな星たちを愛しく見つめる綾菜の姿はいつもの彼女とは違っていた。
まるで、母親のような笑顔。そんな綾菜の頭をジョーは優しく撫でる。
「そっか。それじゃ僕もここで見ていていいかい?」
「寒くない?」
「僕は大丈夫。それに君とこの夜空を見ていたいな、なんて」
ふふ、とジョーが笑えば綾菜は赤面する。
小さく「天然なんだから」という呟きは届かなかったようだ。
「だったら皆も呼ぼうよ!せっかくだしさ」
綾菜が言うとジョーも頷いた。こんなに綺麗な夜空、二人占めは良くないと考えたようだ。
それと同時に二人きりじゃ居た堪れなくなったともいえる。
「ホットチョコレートとかも作ろうか。あったまるし!」
「あと、もう少し着込まなくちゃね。冬の海は寒いよ」
「うん!」
こうして皆と星空を見ることを決めた二人は笑いあった。
これがちょっとした日常の幸せなんだな、と綾菜は思うのである。