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ジョー達が二人の場に辿りつくとそこには綾菜の腕を押さえているハインリヒが見えた。
綾菜は俯いたまま動かない。その瞳からはぽたり、ぽたりと雫が落ちている。

「ハインリヒ…どういうことだ?」

ジェットが問いかけるとハインリヒは複雑そうな顔を向けた。

「この子は僅かだが自我が残っている。そして俺に言った…」


逃げて、と。


その言葉にジェットたちは目を見開く。やはり自我は残っていたのか。
一筋の希望が見えた気がした。

すると綾菜の身体がビクンッと跳ねる。綾菜はハインリヒの腕を振り解いた。
そしてこんどははっきりと聞き取れる声で叫ぶ。

「逃げて…っ、それが出来ないなら私を壊して!!」

このままじゃ皆を傷つける。そう綾菜は判断した。
感情制御装置が自我を食っていく。その感じが綾菜にはわかるのだ。

「傷つけたくない…!もう誰も殺したくない!!もう、やだよぉ……」

頭を押さえその場に蹲る綾菜。
この子も暗い過去を持っていたに違いない。そうジョー達は思った。
決して癒えることのない傷。誰にでもある傷。誰にも言えない、傷。

するとジョーは綾菜の肩を優しく抱く。

「大丈夫。ここには君を拒絶する人なんていないんだから…」

その言葉に綾菜は顔をあげる。久しぶりに聞いた気がする心からの言葉。
しかし────────


「う、うわあああぁぁぁぁあああああ!!!!!」


再び頭を押さえる綾菜。脳内をかきまわされる感覚。
自分じゃ無くなっていく感覚。

「綾菜!大丈夫か!?」

慌ててジョーが綾菜に手を伸ばすが、それをハインリヒが阻止する。

「! なんで止めるんだ!」

「今近づいたら危ない!!」

綾菜の体内中の電気が放出される。
もう、服も身体もボロボロであった。

ジェットは舌打ちを一つすると綾菜に飛び込んでいく。

「おいジェット!!」

ハインリヒの忠告も聞かず綾菜の身体を押さえつけた。「落ち着け!俺はお前に謝らなきゃいけな……ぐっ!!」

次の瞬間────電圧に耐え切れずジェットが吹き飛ぶ。
しかし、なんとか空中でバランスをとり地面へ着地した。

「やっぱりスーパーガンを使うしかねぇのかよ……!」

ジェットがスーパーガンを取り出すと同時に綾菜が猛スピードで詰め寄る。
そして、ジェットのスーパーガンを奪った。

「なっ!!お前返……!?」

勢いよく後ろに離れた綾菜はいつも通りの笑顔に戻っていた。
そして、スーパーガンを自らの頭に突きつける。

「お、おい!やめるんだ!!」

ジョーは加速装置を使い止めようとするが、電撃のせいで近づけない。

「少しの間だけでも仲間にしてくれてありがとう…とても、嬉しかった…!」

大きな瞳から雫が零れる。しかし笑顔は崩さない。

「迷惑を沢山かけてごめんなさい。皆に会えて良かった」


そして彼女が指を引く────────







スーパーガンが綾菜の頭を貫く音とフランソワーズの悲鳴が木霊した。

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