8
悟空達と別れた後、観客席へと向かう悟達。
マーロンと手を繋いでいる彼女にヤムチャが話しかける。
「なあ悟、お前本当は参加したかったんじゃないのか?」
すると俯きながら悟は母、チチを横目で見た。そしてチチはふんっと鼻を鳴らす。
「悟ちゃんは仮にも女の子だべ。傷でもついたらどうすんだ!」
「でもトランクスとかとよく組手してるわよねえ」
ブルマが思い出すように言うと悟は慌てて指を立て「しーっ、しーっ…!」と言うが時すでに遅し。
「ああ、よくお転婆して帰ってくるから困ったもんだ…」
母にはすべてお見通しだった。その言葉に余計に肩を落とす悟。
「私だって…強くなりたいのに……」
その呟きはマーロンにしか届かず、首を傾げられた。
その行動を見てヤムチャはなるほどと一人納得したようだった。
変わってちびっ子組みはがパンチマシンが壊れた事など露知らず、控え室の壁に寄りかかっていた。
「なあ賞金で何を買う?」
「えへへへ…オモチャとお菓子。悟の分も買ってあげるんだ!」
嬉しそうに答える悟天。そしてトランクス君は?と聞き返す。
「ガキだな悟天は…。俺だったらなんにしようかな……」
「トランクス君ちは世界一のお金持ちだから欲しい物なんてないんじゃない?」
「いや…、悟に髪飾りでも買ってやろうかな……」
予想外の答えに悟天が目を見開く。
「髪飾り?」
「ああ、だってあいつ全然おしゃれとかしないっていうか興味ないだろ」
いつもチャイナ服で対決ごっこが好きな悟。
性格はともかく見た目の女の子らしさがまったく無いに等しかった。
「たしかにそうかも…。トランクス君あったまいいー!」
悟天はトランクスに尊敬の目を向けそれに少し照れたトランクス。
同じ部屋では対戦相手が自分達の事を馬鹿にしてるともしらずに────────
*************
戻って観客席。サタンの茶番劇を聞きながら悟はジュースを飲んでいた。
そして後ろの方に自分の父達がいることに気づく。
「あ、お父さん達だ……」
「あら本当。もう予選終わったのかしら」
ブルマ達も振り向くがチチが悟の肩を叩く。
「悟ちゃん。どうせなら悟空さと一緒に観戦するか?」
「えっ…?」
まさかの母の言葉に思わずジュースを落としそうになる悟。
父親とはさっき初めて会ったのだ。いくら本当の父親でも人見知りをする彼女は戸惑う。
「せっかくなんだから行って来なさいよ!」
「会えるのは今日だけなんだからさ」
そう、今日だけなのだ。皆の言葉に押され悟は席を立つ。
後ろからは母の応援が聴こえた。
何を話そう
なんて言おう
お父さんは宇宙一強いってお兄ちゃんが言ってた
それなのに
なんで私は弱いんだろう?
階段をあがりながらドクンドクンと大きく鳴る心臓を押さえる。
こんな弱い自分を本当に自身の子供だと認めてもらえるかが心配だった。
しかし、そんな心配はよそに上ってくる悟に気がついたのはピッコロで、悟空へと声をかける。
「おい孫、お前の娘がこちらに向かってきているぞ」
「え?」
悟空はそれに振り向き階段の方を見ると、まだほとんど見たことの無い自分の娘の姿。
嬉しくないわけがなかった。
悟空は階段をあがりきった悟に近づく。
そして────────
「さっきはちゃんと見えなかったけどあんまりオラに似てねえなあ。悟飯似か?」
「あ…あの……」
「名前、なんていうんだ?」
「……悟、です」
悟空は悟を抱き上げる。
初めての感覚。兄とは違う父親の温もりに悟は涙が止まらなかった。
「お、おとう、さ……」
「ああ、確かにお前の父ちゃんだ」
「う、うあ…うああぁぁぁぁああああんっ」
怖いからじゃない、避けられたらどうしようかと思った。
でもこうやって受け止めてくれた。父親として────────
その様子を見てクリリンは涙を滲ませよかったな悟、と呟いた。
遊びに来るたび父親がいない寂しさを抱えていた事を知っていたから。
他の仲間達も安堵の笑みを浮かべていた。