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ブルマの操縦する飛行機に乗りながら皆は会場へと向かう。
その途中で出場するサイヤ人組は超化しないという約束を設け、それを聞いたクリリンが安心したように胸を撫で下ろしていた。

昔とは違う、人で溢れかえった会場内に皆は絶句した。本当にお祭り騒ぎだ。
悟は一人はぐれないようにチチの手を強く握る。元々こんなに多くの人を見たことがないので少し怖がっているようだ。

「悟空はもう来てるかなあ…」

ヤムチャが辺りを見回すがそれらしき人影はない。
すると何処からか歓声が上がった。

「ミスター・サタンだ!」「ミスター・サタンが着いたらしいぞーーー!!!」

人々は歓声の中へと向かっていく。だが悟達はそれを遠巻きに見ているだけだった。
どんどん大きくなる歓声に悟は怖くなりチチのお腹に顔を埋めた。
それを見た悟飯が「大丈夫か?」と声をかければ小さくうなずく悟。

「ほら、こんな所で泣いてたらマーロンちゃんに笑われちまうだぞ」

チチは悟の頭を撫でると18号の方を見た。
するとマーロンが悟に駆け寄っていき「こわくなーいこわくなーい」と頭を撫で始める。
これには流石に恥ずかしかったのか悟は顔を赤くして慌てて涙を拭いた。

「いきなり大きな声がしたから驚いちゃったのね。孫君の子だとは思えないくらい繊細ねえ」

とブルマは悟の顔を覗きこむ。悟空と一番長い付き合いの彼女は心底驚いた顔をした。

「何泣いてんだよ悟!ほらいくぞ」
「あ、僕も僕も!」

マーロンが18号の元に帰るとお次はいつもの二人が悟の両手を掴む。
それに引っ張られながら少しずつ笑顔を取り戻していくのであった。

「あ!お兄ちゃん、ピッコロさんだ!!」

三人が見つめる先には腕を組んで待っていたピッコロ。
悟は思わず一時停止し、じわりと涙を浮かばせた。

「ピッコロさんは怖くないよー?」
「う…、で、でも……」

悟天が困ったように眉を下げても悟は俯くだけだった。

「目つきが怖いのか?」
「う、うん…。トランクス君のお父さんと一緒なの……」

トランクスが問えば申し訳なさそうに返す悟。
こりゃどうしようもない、と悟天とトランクスは目を合わせた。
ピッコロと話す悟飯に悟空を探すチチ。すると────────

「へへー。ヤッホー!!」

なんとも暢気な声が聴こえてくる。

「悟空!!!」「お父さん!!」「おい!!!」

そこには占いババと共に山吹の胴着が似合う男、孫悟空の姿があった。

「あはー!結構変わっちまったな…みんな。でも元気だったか!?」

すると皆はそれぞれ言葉をかけながら悟空に駆け寄っていく。
しかしちびっこ三人はぽかん、とするばかり。

「あれが…」
「悟天と悟の…」
「おとう…さん…?」

悟が受けた第一印象はとにかく悟天にそっくりだという事だった。
いや、悟天が悟空にそっくりなのだ。

「じゃあ24時間じゃぞ。よいな」
「ありがとう占いババ!!」

占いババとも別れ、悟空の目線は双子へと向く。

「ひゃあー!そっくりだと思ったらオラの子達かー!!」

悟天は確かに悟空そっくりなのだが悟はどちらとも似ていない。
しいていえば幼い頃の悟飯に似ているのだろう。

「悟天、悟!お父さんだぞ!!」

急いで母の後ろに隠れる二人をなんとか前に出そうとするが恥ずかしがって出てこない。
そんな様子を見てピッコロが静かに言う。

「おい、早く受付を済まさんと締め切られてしまうぞ」

それは良くないと出場する者達は足早に受付へと向かった。
こうして父子の出会いはうやむやになってしまったのである。

「え!?少年の部!?」

トランクスの声に悟が振り向く。
そこには納得のいかないトランクスが悟天に話しかけていた。

「おい悟天!15歳以下は大人とはいっしょにやらないんだってよ」
「えーー!?」

それには流石の悟天も叫ぶしかなかった。
トランクスは受付の人に迫る。が────

「いいよそんなの!俺たち大人の方でやらせてよ」
「だめだめ!規則ですからね」

あっさり断られてしまった。ちぇー、と口を尖らすトランクスの後ろでクリリンが内心安心したのを見たものはいなかった。

「じゃあいってきまーす!」
「みんなほどほどにねー!」
「いってらっしゃい…!」

悟はマーロンと手を繋ぐと皆を見送った。
本当は自分もあっちに行きたかったな…、と少ししょんぼりしながら。

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