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カプセルコーポレーションでは重力室でトランクスとべジータが特訓していた。
トランクスは悟天が天下一武道会に出ると聞いて必死だった。
話によると悟は出場しないらしい。電話で泣きながら自分に言ってきたのをトランクスは思い出す。
母親に「女の子はそんなのに出なくていいべ!」と怒られたのだそうだ。

その事を父、べジータに話すと「まるでお祭り気分だな」と鼻で笑われた。

「や…やっぱりこのままじゃ辛いや…。超サイヤ人になろっと……」

肩で息をしながらトランクスが呟く。その言葉が耳に入ったべジータが振り向くとそこには超化した我が息子が飛び回っていた。

「楽チン楽チン!!」

元気良く走り回る息子に目を見開いて冷や汗をかく。

「あ…あいつ…いつから……」

冗談じゃない、と悪態をつきべジータはトランクスを呼ぶ。

「孫悟飯の弟や妹もなれるのか?…超サイヤ人に……」
「はい…あ、でも妹の悟ちゃんはまだなれないです」
「……まるで超サイヤ人のバーゲンセールだな………」

自分達が苦労してなった超サイヤ人にこうも簡単になられるなんでたまったモンじゃない。
彼は少し考えた後、トランクスに向かってかかってこい、と構えた。

「い、いくらなんでも無理だよ。お父さん強すぎるもん…」
「さっさとかかってこい。どうだ、俺の顔面に一撃だけでもくらわせられたら遊園地に連れてってやるぞ」

その言葉に一気に笑顔になるトランクス。
あの修行ばかりしている父が遊園地に連れて行ってくれるというのだ。
トランクスは俄然やる気を出し父へと向かっていった────────


結果はべジータの顔面に一発掠めたものの、彼の拳に弾きとばされてしまった。
トランクスは涙目になりながら鼻血を拭う。

「な…泣くな!遊園地は連れてってやる…!…それよりどうだ、お前と孫悟飯の弟とどっちが強いんだ?」

遊園地という単語を聞いた途端トランクスの顔に笑顔が戻る。

「僕のほうがちょっとだけ強いよ。悟天君は1歳年下だしまだ空も飛べないしね」
「……妹の方は」

するとトランクスはきょとんとした顔をしながら腕を組む。

「えーと…。力は僕や悟天君より下だけどスピードだけは僕も敵わないんだよね…」

悔しそうに項垂れるトランクス。
それを聞くとべジータは眉間に皺をよせる。

(ちょっとだけ、それにスピード…。どうなってやがるんだ…まったく……)

まさかの子供達の強さに少し危機感を抱いたべジータは更に特訓を重ねるのだった。


**************


「見てよほら!ずいぶん浮くようになったわ!!」
「いいよいいよ!もうばっちりだ!!」

パチパチと拍手を送りもう自分の教える事はない、と嬉しそうに話す悟飯。
しかしビーデルの目線は遠くの空────否、物凄い速さで飛ぶ双子の姿だった。
何日か前にも見た光景である。

「ねえ…アレぐらい飛べるまで何日かかるかしら…」
「え?」

その質問に悟飯は思わず頭を掻いた。元々気の使い方が長けている二人と一般人のビーデル。
差は出て当然なのだ。

「さ…さあどうかな…。わ、わからないけど……」

その様子にビーデルはむっとした表情で

「それまではここまで通わせてもらうつもりよ」

と、言い放った。
それはまずい、と悟飯は急いで二人の元へ向かう。

「おい二人とも…。ビーデルさんのいる時はこれ以上早く飛ぶな頼む…!特に悟!!」
「?」
「お前もう少しスピードを落とせないか?せめてビーデルさんが目で確認出来る程度に…!!」

そう、悟の飛ぶスピードが滅茶苦茶速いのだ。
本人は楽しかったらしいが兄に言われては仕方がない。彼女はしぶしぶと頷いた。

「なあに?」
「あ、いえ。ちょっとアドバイスを…!」

悟飯が地面に足をつくと同時にビーデルも降りる。
額の汗を手の甲で拭いちょっと休憩、と呟いた。

二人が下で話をしている間、双子は空中で今度の天下一武道会の事について話していた。

「悟出られなくて残念だったねえ」
「うん…お母さんがどうしても駄目だって……」

悟はがっくりと肩を落とす。
何度かチチにアタックしてみたが駄目だったらしい。

「私が弱いからいけないのかな……」

じわっと涙を浮かべる悟に悟天が手を握る。

「きっと怪我しちゃうからだよ!悟は弱くないもん。いつも追いかけっこじゃ僕もトランクス君も勝てないし」

そう言うと悟天はにぱっと笑った。それにつられて悟も涙を拭い笑い返した。

「お父さんってどんな人なんだろうね」
「どきどきするね…」

そしてふと下をみると休憩が終わったらしい二人を見て双子は地上へと降りる。
ちょうど父親の話をしていたようだ。

「ふーん…。お父さんってやっぱりまあまあ強かったの」
「うん凄く強かった」
「お父さんねえ、今度の天下一武道会に出るから一日だけ帰って来るんだよ」

ねー、と悟天と悟が笑いあう。

「え!?帰ってくるって……!?」

どういうこと?と目を見開くビーデル。
悟飯は慌てて双子に目をやる。

「バ、バカ二人とも!言っちゃ駄目だって言ったじゃないか!」
「「あ!」」

二人は同時に口に手を当てた。
するとビーデルは────

「あ……わかったわ!もしかして君達のお父さん昔家出しちゃったんでしょ!でもないしょで武道会に出るって君達だけに連絡があった……」

そうでしょ?と推測するビーデルに悟飯は思わず固まる。
その間にもビーデルは勝手に納得してしまった。

「さあ、そんな事は忘れて特訓特訓!!」

その後10日間でビーデルはかなり自由自在に空を飛べるようになり、子供達との交流も深めていった。
それからはじまる特訓の日々。悟は出場しないがどうしても置いていかれたくなくて一人で特訓したり、悟天と組み手をしたりしていた。
天下一武道会はあと少し────────


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