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ブウの復活により、半分に裂かれたバビディの身体が元に戻った。
バビディは苦々しく言葉を吐く。

「…あの緑色のヤツと2匹のチビめ……絶対に許さんぞ…!!!」

恐ろしさを見せ付けてやる、と歯を食いしばった。



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「し、死んでない…!?…魔人ブウが!?そ、そ、そんな…べジータはムダ死にだってのか…!?」

「地上は危険だ!この三人は神の城に連れて行くぞ!!」

クリリンは悟天とトランクスをピッコロに渡すと、なんとか背中にしがみついている悟をおんぶした。
悟の表情は少し朦朧としていたが、少しは落ち着いたようである。

「希望の星はこの三人だけだ…!わ、わずかな希望だが……」

そんな言葉が悟の頭にこびりついて離れなかった。




神の城に着いてから、悟天とトランクスはベッドに寝かされる。
悟も勧められたが彼女は断り、外の階段のふちに座っていた。
しかし、何故か先ほどから視界がふらふらしている。───よっぽど悟飯の事がショックだったようだ。
隣でクリリン達が家族を連れてきて良いかと話している声も少し遠くに聞こえる。
その時────

ピクリ

気を感じた。間違いなく自分の父の気だった。悟は二人よりも早く走り出す。
それにつられてクリリンとピッコロも気の場所へと向かう。。
走った先にはボロボロの自分の父、悟空の姿が。


「よう……」

悟は涙を抑えながら悟空に抱きついた。
しかし抑えても抑えても涙が止まらず、しゃくりあげてしまう。
まだ事情を知らない悟空は少し首を傾げながらも優しく頭を撫でた。



デンデに傷を治してもらい、改めて悟とクリリンの間に座った悟空。
ピッコロたちは今まで起きたことをすべて話した。

「…なんてことだ……悟飯も界王神様も、べジータまでもやられちまったなんて…」

悟空は悔しそうに俯いた。悟飯とべジータの名前を聞き悟はまた涙目になる。

「魔人ブウの強さは界王神様が恐れていた通り、想像を絶するものだ…。
このまま放っておけば間違いなく地球人はおろか宇宙中の生物はすべてきえてなくなる…」

「でもよ悟空、お前が生きててくれたのは不幸中の幸いだ…魔人ブウを倒せるのはお前だけだよ!」

クリリンは必死に笑顔でいようとするが、悟空の表情は暗いまま。
床を見つめたまま悟空が口を開いた。

「……はっきり言おう、ムリだ。オラには倒せねえ…」

意外な返答に悟は隣の悟空の顔を覗き込み見る。
出会ってから一度も見たことの無い、父の焦り顔だった。

悟空とべジータは同じくらいの実力だったのだ。
どうやっても勝てない、と悟空の口から出る。

「そうか…そうだな……」

「くそ〜〜…べジータか悟飯のどっちかだけでも生きてたらまだ、なんとかなったかもしれなかったのに…」

「…いや、多人数でかかっても恐らくムリだっただろう。そういうレベルじゃなかった…」

「いや、そうじゃなくてフュージョンを使うんだ…」

「ふゅーじょん…?」

悟は言いにくそうに聞き返した。
クリリンもわからないようで、二人で頭にハテナを浮かべる。
するとデンデが口を開いた。

「フュージョン…!融合ですね!メタモル星人の得意な術だ!」

そこから悟には難しい言葉が続いていった。
ただ、宇宙には沢山の星や人がいる事を知った。それに悟は少し眼を輝かせる。
そしてもう一つ、フュージョンとは力や身体の大きさが近い場合に出来る事のようだ。
すると、気づいたかのようにクリリンが悟の腕をとった。

「悟天と悟は双子だし、いけるんじゃないか!?」

ピッコロ達は一瞬、そうか!と顔を輝かせるもそれはすぐに落胆に変わる。

「悪いが悟と悟天じゃ身体の大きさは近いが力の差が歴然としてる。ムリだ」

悟空は申し訳なさそうに言う。クリリンもごめん…っと悟に頭を下げた。
いつもの悟なら泣いていただろう。しかし全員が悟を見ると眼を見張った。
目尻に涙は溜まっているが、どこか凛とした彼女の姿があったのだ。
その瞳には先ほどの無気力な感じとは違う、炎を思わせる力強さが。

「あ…私、力がないからムリなのは…わかります。でも、でもせめて何かしたいんです…強くなりたいんです…っ」


一緒に修行をつけてくれませんか…っ


全員に向け土下座の格好で懇願する。いきなりの行動に一同は慌てるが、ピッコロが悟の前に出る。

「本気か」

「はい…」

「途中で逃げ出したり、泣き言を言ったりしないか」

「しません……っ!」

「なら、引き受けてやる」

悟が勢いよく顔をあげた。そこには仏頂面だがすこし口元が緩んだピッコロ。
悟は涙の跡がついたままの顔で嬉しそうにはにかむ。

その光景に悟空やクリリンも悟の成長を手に取るように感じていた。



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