20
悟天とトランクスがブウの拘束からべジータを開放し、ピッコロがバビディの身体を引き裂いた。
二つに裂かれたバビディにピッコロは忌々しげに唾を吐きかける。
その様子を見ていたべジータが静かに口を開いた。
「トランクス…ブルマを…ママを大切にしろよ……」
「え?」
驚愕したトランクスが父の顔を見る。
少年は父の言う言葉が理解出来ずに問い直す。
「ど、どういうこと?パパ……ママを大切にしろ…って……」
「お前達はどこか遠くへ避難していろ…魔人ブウとは俺一人で戦う」
「い、いやだ!俺たちも戦う!!パパ一人じゃ殺されちゃうよ!!!」
3人でやればきっと…とべジータに訴えるが、べジータは此方に視線を合わせようとはしない。
「無理だ…あいつには何人でかかっても……普通の戦い方をしていては…」
「え?そんなことないよ!強いんだぜ俺たち!!」
「うん!」
子供二人は自信満々に構える。するとべジータがゆっくりとトランクスの方を向いた。
「トランクス…お前は赤ん坊の頃から一度も抱いてやった事がなかったな」
「へ!?」
「抱かせてくれ……」
いきなりの父の発言にトランクスは戸惑うが、おずおずとべジータの腰に腕をまわす。
いつも厳しかったお父さん、でも大好きなお父さん。手のひらのぬくもりが背中から伝わってきた。
「な、なんだよパパ…!やめてよ恥ずかしいよ……っ!!」
そして滅多に見せない、柔らかく包み込んでくれるような笑顔でべジータは言葉を放つ。
「元気でな……トランクス」
トランクスは上手く聞き取れなかったようで父を見上げた瞬間、首根っこ辺りに強烈な衝撃が。
それと同時にトランクスの超化が解ける。…気絶したのだ。
「あっ!お、おじさん何を……!!」
悟天がべジータに抗議しようと近寄ると、鳩尾に一発。少年は硬い地面に倒れた。
その姿をクリリンと見ていた悟は衝撃を受ける。
飛び出したいがピッコロとべジータが何か話しているのを見て、きっと何か訳があるのだと察した。
二人の会話は聞き取れない。ピッコロがトランクスと悟天を抱えて自分達の上を通り過ぎる。
「急げクリリン!悟!!急いでここを離れるんだ!!!」
「あ、ああ…!悟、手を離すなよ!!」
「はい…っ」
しっかりとクリリンの手を繋ぐと二人は飛びだった。
遠くでべジータの気が膨れ上がるのを感じながら。
「お、おい…!べジータのヤツどうするつもりなんだ!?殺されちまうだろ!?」
クリリンの問いかけにピッコロは前を向いたまま歯を食いしばった。
「…あいつははじめて、自分以外の者の為に戦おうとしているんだ……己の命を捨てて…っ」
その言葉の意図は悟にはわからなかった。
そしてべジータは自分の気を限界まで膨らませ、魔人ブウに言い放つ。
「貴様を倒すには、二度と修復できないよう粉々に吹っ飛ばす事だ…!!」
「!!」
(さらばだブルマ…トランクス…そして、カカロット……)
「うおおおおおおおおおおお────っ!!!!!!!!」
雄叫びと共にべジータを中心とした爆発が起きる。
魔人ブウも苦しげな声を出しながら身体が粉々になっていった。
「べ、べジータ…べジータあああああああああ!!!!!」
「…く………!」
「あ…ああ……っ」
がたがたと震え、そして涙を零しながら悟は叫ぶ。
「おじさぁぁぁぁぁああああああああん!!!!!!!!」