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「パパだ!」

トランクスが身を乗り出し叫ぶ。
しかし、いつものべジータとは雰囲気が違うと悟は思った。
禍々しい悪の気。だが、気高く力強い気。

ピンクの男、もとい魔人ブウと何かを話しているようだがよく聞こえない。
すると耳の良いピッコロが何か聞き取ったのか目を見開いた。

「え?なに!?なんて言ったの?パパ…」

そう問いかけるがピッコロからの返事はない。
小さく呟いた「ご…悟飯……」という声は誰にも届かなかった。
そのうち魔人ブウの頭から蒸気が勢いよく噴出す。
それと同時に恐ろしい気が膨れ上がっていくのを全員が感じ取った。

「お、おい…。あの化物野郎さらに気をでかくしやがった……っ」

なんてヤツだ、とクリリンは開いた口が塞がらない。
べジータは相手を見据えると気を高め魔人ブウへと突っ込んで行く。
ラッシュ技が次々と決まり、バビディも焦りだした。

「す…すげえ!べジータ滅茶苦茶強いぞ!!」

「ははっ」

「おじさん頑張って…っ」

「いいぞパパー!」

仲間たちが応援する中、ピッコロはただ一人浮かない顔をしている。

「ヤツも超サイヤ人を越えてしまっている…
とてつもないパワーだ。セルと戦ったときの悟飯…それ以上か……」

かつてセルと戦った時、戦士の中でもっとも強かったのは悟飯だ。
その悟飯さえも今はもういない。ピッコロは奥歯をかみ締めた。

ボコボコになった魔人ブウの顔がゴムのように元に戻る。
するとべジータは右腕を前に突き出し気を集中させた。


ドウッ


べジータの手から出された気の塊が魔人ブウの腹を突き抜ける。
その姿にバビディは「ひっ!!」と悲鳴を上げた。

「やったあ!」

トランクスが腕を挙げて喜ぶがそれもつかの間。
腹に大きな穴を開けた魔人ブウが立ち上がると自分の無くなってしまった部分を綺麗に再生したのだ。

「ちょっと…いたかったぞ…へへへ」

「…不死身かてめえは……」

べジータが舌打ちをすると魔人ブウの周りが光りだした。

「おまえなんか…」

どんどん膨れていく魔人ブウの気。それに合わせ大地も揺れる。

「ま、まずいぞ…!!」

クリリンが立ち上がろうとしたその瞬間────


「きらいだああああああああっ!!!!!!!」


まるで風船が破裂したかの様に恐ろしい気が爆発した。
光がすべてを飲み込んでいく感覚を悟は覚える。

「にっ、逃げろおおおお!!!!」

ピッコロの忠告は耳に入らなかった。その場にいた者達は遠くへと吹き飛ばされる。
小さな悟の身体も簡単に飛ばされたがその時少女の身体に変化が起こっていたのを誰も気づく事はなかった。

かつてあった荒野の真ん中には大きな穴しか残っていない。
吹き飛ばされた面々は立ち上がり辺りを確認する。

「みんな無事か!」

「悟!しっかりして悟!!」

ピッコロの声に続き悟天の声が耳に入ってくる。
慌てて皆が悟天の元に集まると倒れている悟の姿が見えた。

「し、死んで…?」

トランクスはそこまで言うと悟天が睨みつけてくる。少年は慌てて口を塞いだ。
ピッコロが悟に近づくと気の塊を感じる。
よく見てみると悟の周りに薄い気の膜が張られているのがわかった。

「…簡易なバリヤーを無意識に張ったようだな。いきなり大きな気を使ったんで気絶しているだけだろう」

それを聞いて一同は胸を撫で下ろした。確かに悟には傷一つついていない。
クリリンは悟を抱えなるべく平らな所へと寝かせる。
そしてピッコロ達は魔人ブウへの方へと視線を向けた。

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