14




いよいよ悟飯の番。相手選手、キビトは顔こそ怖いものの、悟は不思議と怯えていなかった。
そう、先ほどのシンと同じ気を感じるのだ。

「ファイト悟飯ー!優勝は無理でも一回くらいは勝てよー!!」

そんな声が観客席から飛んできた。思わず悟飯は口をぽかんと開け放心してしまう。
しかし、諦めたのかサングラスを外し声のするほうへと苦笑いを浮かべた。

「お兄ちゃん…大丈夫かな……」

悟は兄の力を信じていない訳ではない。それでも不思議な気にあてられ少し不安が過ぎる。

『はい、いいですかー。試合を始めてくださーい!』

悟飯は身構えるが試合は一向に始まらない。何か話しているようだが観客席にはまったく聴こえなかった。


「おーいどうしたんだよー」  「なにやってんだー!」  「早くしろー!!」


客側からも野次が飛ぶ。チチは片腕を振り上げ怒声を放った。

「うるせえぞおめーら!これからすんげー事になんだからよ!よーく見とけバカ!!」

「お、お母さん落ち着いて…!」

悟が必死に母を落ち着かせようとするがチチの怒りは収まらない。
しかし、少し頭が冷めたのか腕を下ろした。そのとき────────


「つあっ!!」


掛け声と共に悟飯が超サイヤ人へと変貌する。
普通の超サイヤ人ではない、それを上回るほどのパワーだ。
ここまでパワーを引き出した悟飯を悟はあまり見たことがなく、思わず身震いをした。
すると、二人組みの男がリングへと乗り出す。普段の悟飯なら簡単に避けられるが、悟飯の身体は縛られたように動けない。

ズンッ

痛々しい音が響く。不思議な形状をした入れ物の先が悟飯の脇腹に刺さった音だ。
悟飯はその場に倒れると男達は何処かへと飛び去った。

「お兄ちゃん!」

思わず悟が飛び出そうとするとヤムチャに制される。

「駄目だ!危ない!!」

「でもお兄ちゃんが…お兄ちゃんが……っ!!」

そうこうしているうちにシンも会場を飛び出していった。
それに続き悟空達も男達が向かったほうへ飛んで行く。
悟は頭の中がぐちゃぐちゃになり、何が起こっているかまったくわからない。
すると悟飯の無くなりかけていた気が戻るのを悟は感じた。リングの上を見るとキビトが悟飯に気を送っているのがわかる。

「お兄ちゃんの気が戻った…」

「何者なんじゃあやつは……」

亀仙人と共に呟く。悟飯は何事も無く立ち上がったと思うとビーデルと一緒に飛んで言ってしまった。

「何よ、どうなってんの!?皆行っちゃったじゃない!!」

「い…嫌な予感がするだよ……」

「なにかありそうだなこれは…」

全員、悟空達が飛び去った方向を見つめ冷や汗を垂らす。
チチの勘はこのあと当たるのであった。






***********





それから一時間後、皆が帰ってくる様子はない。

「やはり何かが起こっておるようじゃな…遠い場所で大きな気が集まっておる……」

「それと何かとても…怖い気を感じる……」

微かだが邪悪な気を悟は感じていた。今にも破裂しそうな気を────


『ご来場の皆さん大変お待たせいたしました!たった今ミスター・サタンの提案により残った5人でバトルロイヤルを行う事に決定致しました!!』


観客席から歓声が飛んだ。しかしブルマ達はつまらなそうにしている。

「こりゃ18号が優勝ね」

ズズーッとジュースを啜りながらブルマは溜息をついた。
悟に限っては悟天とトランクスの変装がいつバレるかひやひやしている。
開始してすぐ、キーラとジュエールは18号とトランクスの手で場外負けしてしまう。

二人はサタンになど視界に入らず、お互いを見つめていた。



- ナノ -