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『皆様たいへん長らくお待たせしましたーっ!いよいよ試合開始です!!天下一武道会ーっ!!!』


アナウンスと共に大きな歓声が会場を飲み込んだ。
アナウンサーの横に対戦ボードが置かれ、それを次々読み上げてく。
悟は買ってもらった肉まんを6個平らげ次の肉まんへと手を伸ばしていた。

「おいおい、悟空はいきなりべジータとだぜ。荒れそうだぞこりゃ……」

ヤムチャが呟く。純粋なサイヤ人同士の戦い。それは死闘をも意味する。
第一試合はクリリンと大柄でその凶暴さが顔に滲み出ているプンターだ。
その姿にマーロンは思わず口を開く。

「おとうさんとケンカする人大きくて強そう…大丈夫かなあ……」

心配するマーロンにヤムチャは頭を撫でながら元気付けた。

「平気平気!あんなのどうってことないさ!お父さんは世界で一番強いんだ!」

その言葉に悟も微笑みながら頷く。地球人の中じゃね…というヤムチャの呟きは聴こえてこなかった。
しかし、ヤムチャの言う通りクリリンは身体の割りに重い攻撃を食らわせみごとプンターを吹き飛ばした。


おおーっ!!


湧き上がる歓声。アナウンサーも心なしか嬉しそうだ。
次の試合ではピッコロがまさかの棄権。悟はピッコロの相手、シンを見て肉まんから口を離した。

「どうしたの?悟ちゃん」

「うん…あの人の気、なんかとても不思議なの……」

マーロンに言われそう答えた悟。だがマーロンには理解できず首を傾げていた。

(さっき感じた気と同じ…。誰なんだろうあの人)

気になりつつも誰にも聞けないので悟は一口、肉まんを口に含んだ。
ビーデルとスポポビッチの対決。会場はビーデルコールで包まれる。
悟もビーデルを見るや精一杯の大声で「ビーデルお姉ちゃんがんばれー」と叫んでいた。
最初こそ怖がっていた悟だがやはり女の子同士。すぐに打ち解けたらしい。
しかし相手の男の瞳を見たとたん小さく悲鳴をあげる悟。
それはまるで飢えたハイエナのようであった────

『では始めてください!』

アナウンサーの指示と共に身構えるビーデル。そして突撃した。
その後も次々と技が決まっていく。が、スポポビッチは何度も立ち上がってきた。
男の蹴りが入り、場外へと吹き飛ばされるビーデルだったが舞空術でなんとか体制を立て直す。

(なにか、なにかおかしいよ…っ)

悟の頬に一筋の汗が流れた。
どれだけ技を入れても倒れないのだ。それにスポポビッチの気はとても不気味であった。
やがてビーデルの重い蹴りが男の首に決まる。


グガッ


不穏な音と共にスポポビッチの首が180度回った。
観客席からは「殺しちまった……!」とどよめきが起こる。
しかし、男はいとも簡単に首を元に戻してみせた。

「な…なにこいつ……!」

ビーデルがそう呟いた瞬間────、顔面に一撃が入った。
少女は溢れる鼻血を止めようと手で覆う。そして空へと飛び上がった、が────

「とっ、飛んだ!!!」

なんとスポポビッチまで舞空術を使ったのだ。
ビーデルは男の放った気功波に叩き落されさらにパンチを食らった。
そこからはほとんど反撃ができないまま男にタコ殴りにされてしまう。


「ひ…ひでえ……」 「や、やめろ!!」 「ビーデルちゃんが死んじまう!!」


観客席からも悲鳴が飛び交う。
悟もチチの服を掴みながらカタカタと震えていた。

「お…お姉ちゃんが死んじゃうよぉ……っ」

こんな酷い戦いを少女は見たことが無かった。こんな一方的な戦いなんて…────
その後も攻撃が止む事は無く結局ビーデルは場外負けにさせられた。
急いでビーデルを抱き上げる悟飯。何を話しているか悟には聴こえなかったが悟飯がとても怒っている事は良くわかる。

「お姉ちゃん痛そう…」

目に涙を溜めながら悟が呟く。そんな悟をヤムチャが元気付けた。

「きっと悟空達が仙豆を取りに行ってくれるさ」

「せん、ず……?」

「傷があっという間に治っちゃう不思議な豆さ」

な?とヤムチャがウィンクをすると悟は少し笑みを取り戻した。
ヤムチャの言ったとおりビーデルは悟空の取ってきた仙豆を食べ、すぐに元気になるのであった。


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