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その後も激戦が続き、なってはいけないはずの超サイヤ人になったり、
トランクスが左手を使わないというルールを出したりとお互い戦いを楽しんでいたが結果は悟天の場外負けであった。
この結果にべジータは悟空の肩を叩き嬉しそうにトランクスの事を褒めた。

「二人ともサイヤ人になれんのかー。悟、お前は…」

「わー!わー!!悟、今の試合凄かったなあ!!」

悟空は悟に超サイヤ人になれるのか話しかけようとすると悟飯が大声を出す。
その様子に悟は首を傾げながらこくり、と頷いた。
悟飯は胸を撫で下ろすと悟空に耳打ちをする。

「お父さん、悟はまだ超サイヤ人になれないんです。その事を悟は気にしてるので言わないであげて下さい……」

「お、おお。わかった」

悟空は目線を悟に戻す。こんな華奢な女の子でもやはりサイヤ人の血は入ってるんだな、と悟空は思った。
くしゃりと悟の頭を撫でると悟はくすぐったそうに身をよじる。

「悟、お前は強くなるさ」

ぽつりと悟空が呟いた声はサタンへの歓声で消えていった────。






********





アトラクションではトランクスが見事にサタンをふっ飛ばし、あっさりと終わる。
その時のビーデルと悟飯の顔をみて悟は、きっと良くない事をしてしまったんだなと感じ取りハラハラしていた。
そのうちアナウンスが流れ、大人の部まで30分の休憩がある事を知らされる。

「悟、お前はどうする?」

悟空に聞かれ悟は少し考える仕草をする。

「あ…、一回お母さん達の所に戻ります…」

悟はそう言うと悟空の腕から飛び降りた。
そして去っていく悟空たちを見送る。大きく手を振りながら────。


「悟ちゃん良かったな!悟空さに抱っこしてもらえて!!」

観客席に戻るとチチが頭を撫でてくる。
悟はよほど悟空に抱っこしてもらえたのが嬉しかったのかニコニコと笑みを絶やす事は無かった。

「お父さん、とても優しかったよ…!」

「よかったわねー、なにせ初めて抱っこしてもらったんだもんね」

ブルマが微笑むと悟は嬉しそうに頷いた。

「えっと…悟天とトランクス君は?」

「まだ二人とも帰ってきてないんだよ。試合は終わったのにな」

その言葉に悟は目を見開く。せっかく一緒に観戦しようと思ったのに…。
しかし、悟に名案が浮かんだ。

「だったら、私探してくる…!」

そう言い立ち上がる悟。思わずチチが驚いた。

「一人でか!?」

「う、うん…。駄目かなお母さん……?」

するとチチは目に涙を溜めながら悟に抱きついた。

「ま、まさか悟が一人で行くって言い出すなんて…!オラは嬉しいだ!!」

普段から知らない所では一人で行動をしようとしない悟にチチは嬉しくて堪らなかった。
自分の娘が確実に成長してるのが手に取るようにわかる。

「じゃあ、行ってきます」

「変な人にはついて行かないようになー!」

「はーい…!」

そう言うと悟は地面を蹴って走り出す。
そのスピードは一般人からしたら風が横切った様に感じるほど早かった。


(悟天やトランクス君の気は…こっちだ)


気のコントロールがずば抜けて良い悟は気を探る事も習得していた。
やがて足を止める。そこには係員が立っていた。よく話を聞いてみると予選を通過した人しか入れないそうだ。
悟は困った表情を浮かべた。悟天たちの気はあの中からするのに自分は入れない。
そして考え付いたのは悪いこと。────強行突破だ。
少し躊躇しながらもこれしかないと悟は足に力を溜めそして────────


ヒュっ


出来る限りのスピードで係員の横をすり抜けた。
もちろん係員は気づかない。悟はスピードを落とさず走る。
すると悟天達を見つけた。

「ご、ごてーん!トランクスくーん!!」

その声に二人は振り向きそして驚く。

「悟!?なんでお前がここに!!」「二人とも帰ってくるの遅いから探しにきたんだよ…!」

「でも係りのおじちゃんとかどうしたの?ここ戦う人しかはいれないよね?」

悟天の言葉に悟は声を詰まらし俯く。

「あの…悪い事なんだけど…すり抜けてきちゃった……」

まさかの発言に悟天とトランクスは顔を見合わせる。今まで規則など破った事のない悟が?
しかし悟の足の速さを思えばその位朝飯前か、とトランクスは納得した。


「しっかし俺らもつまんないんだよなー。大人と戦いたいよ」

トランクスがぶーたれると悟が仕方ないよ、と苦笑する。
悟天はジュースを飲みながらもトランクスに同意した。

ふとトランクスが選手控え室を見る。そして目を見開いた。

「おいっ悟天、悟!ちょっとこっちきてみろよ!!」

「え?なに?」

「どうしたの?トランクス君…」

「見ろよあいつ…!あそこにいる覆面のやつ……!!」

三人は覆面を被った人間に視線を集中させる。

「あはは、おかしな覆面だね!」
「ふふ…!」

「…あそこにいるって事は予選を通過したヤツってことだ……。どうだ!使えると思わないか?」

「「え!?」」

思わず双子の声が重なる。
トランクスはにやっと悪い事を思いついた顔をした。

「あの格好なら俺達が入ってもわからないぜ」

「えっ!?ど、どういうこと!?」

未だに状況が飲み込めない悟天と悟にトランクスは人差し指を立てる。

「わからないのか?ようするにあいつに一発食らわせてのびてる間に服をいただいてさ、あいつのふりをして試合に出るんだよ!」

「だ、だめだよそんなこと!ムチャクチャいうなトランクスくんは!!」

「そ、そうだよ…!怒られちゃうよ!」

止める双子にトランクスは少しムッとした表情を浮かべた。

「なんだよ悟天は大人たちと試合してみたくないのか?」

「そ、そりゃしてみたいけど……」

「悟も、もっと熱い戦いみたいだろ?」

「う…。それは見たいけど……」

「だろ!?よし、決まりだ!!」

「「ちょ、ちょっと…!」」


二人の制止も聞かずトランクスは飛び出した────。



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