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トランクスとイダーサの差は歴然としていた。
トランクスは足払いに続き空中へと蹴り飛ばす。これで決着はついた。

「ちぇ…、ちょっとだけムキになちゃったかな…ガキだな俺も……」

悟天と悟も見ているのに────

1歳違いとはいえ弟、妹分と思っていた二人。
それを考えると先程までの自分が少しかっこ悪く感じた。


「やれやれ…、こりゃあトランクスと悟天が戦うまで退屈そうだぞ……」

クリリンが柵に凭れ掛かりながら一つ溜息を吐いた。
周りの仲間達もそれに同意する。悟は悟天の番はまだか、悟飯はまだ来ないのかと落ち着きなかった。


試合が進み悟天の番となる。
悟天は観客の多さに照れながらも目で悟を探す。

「!」

それが悟にも分かったようで、大きく手を振った。
すると悟天も笑顔で手を振りかえす。

下で白熱する母親同士の戦いを耳にしながら悟は笑顔だった。
それをクリリンはまじまじと見つめる。

「お、どうしたクリリン」

「いや、本当にこの双子似てないよなーって思ってさ」

その言葉に悟は首を傾げ「そうかなぁ…」と小さく呟いた。

「というか悟天が悟空に似すぎなんだよな」

それには悟も頷く。

「でも、なんとなく悟天の考えている事はわかる…よ」

少し恥ずかしそうに悟が言う。

「多分今、悟天はもういいやって思ってる…」

皆が視線を戻すと相手の顎に一発パンチをお見舞いしている所だった。
そしてピッコロが「確かにそう言っていた」と呟く。
これが双子というものなのか、と周りは驚きを隠せなかった。悟は少し誇らしそうに微笑んだ。



**********



そして決勝戦。もちろんトランクスと悟天の戦い。
会場もとても沸いていた。

「やっとおもしろい試合が見られるぞ」

「ああ!」

「あ!お兄ちゃんだ…!」

その声に振り向けば小走りして此方に向かってくる悟飯とビーデル。

「ふう!おまたせ!!お、なんだ悟、お父さんに抱っこしてもらってるのか」

よかったな、と悟の頭を悟飯は優しく撫でた。

「遅かったんだな新しいパンチマシン」

「よかったな、二人の試合に間に合って」


悟は「二人ともがんばれー」とまた手を振る。
それに気づいたようで悟天は手を振り、トランクスはグッと親指を向けた。

『それでは天下一武道会少年の部、決勝戦をはじめてくださーい!』

アナウンスが場内に響き、二人は礼をする。
そして間合いを取った。

「言っとくが手加減はしないぞ悟天……」

「うん…僕もだよ」


そこから始まる壮絶なバトル。
殴り殴られの繰り返し、そしてカウンター。その速さは常人を越えていた。
その戦いは空中に浮くまで及んだ。


バチィッ


大きな音が響くと二人は地上へと戻り、笑った。
会場内は呆気に取られ物を食べる音すら聴こえない。
会場の隅からの「な…なんなの……あ、あいつら……」と言う呟きさえも誰にも届かなかった。

会場の立ち見席にいる組ではビーデルが口を開いたまま固まっていた。
その隣では楽しそうな談笑。

「ちっこいトランクスも悟天ってのもけっこうやるじゃねえか!」

「でしょ!」

「ははー、いいぞいいぞ!」

「…いいなあ」

楽しそうだな、と一人拗ねる悟。
それと同時に身体を動かしたくてうずうずしていた。


すっ すげえーっ!!


再び沸く会場内。その声にも慣れたのか悟はもう泣かなかった。
そして良く見てみるとトランクスの両手が光っていた。

「あ、あいつまさかあんな位置から気功波を…!?」

「バッ、バカ!観客席に飛び込むぞ!!」

「…トランクス君なら大丈夫だよ」

「…え?」

「悟の言う通りだ。あいつ達をなめちゃ駄目だ」


トランクスは身構えそして────

「それっ!!」


ドンッ


両手から出した事によりより大きな気弾が放たれた。
それを悟天はなんなく避けてみせる。そしてトランクスが両腕を上げる。
それにより気功波は空の彼方へと飛んでいった。

すると悟が慌てだす。

「ご、悟天!駄目!使っちゃ!!」

「え!?」

初めて聞くような悟の大きな声に周囲は驚くが悟天は気づいてないようす。

「どうしたんだよ悟」

「悟天がかめかめ波撃とうとしてるの!」

「かめかめ…?」

悟空が首を傾げると悟飯が苦笑しながら「この子達『は』が言えないんです…」と答えた。
そうこうしているうちに悟天のかめはめ波は放たれる。

しかしトランクスに避けられ向かうは会場の屋根。
悟はとっさに悟空の腕から抜け出し宙に浮くと身構え────


「かめかめ……っ波ー!!!!」


悟天の放ったかめはめ波に見事命中させ、難を逃れた。
しかし今の一撃により会場内の視線が一気に集まる。
すると悟はみるみる顔を赤くさせ悟空の腕の中へと戻った。

「あいつはまだコントロールできねえのか…それにしても」

悟空は自分の腕の中でうずくまっている娘の頭をポンポン叩く。

「お前コントロールうめえなあ!オラビックリしちまったぞ」

「悟は気のコントロールがとても上手いんですよ」

褒められ余計に頬を染める悟だが下から悟天が「悟ありがとー!」と手を振っているのを見て少し安心した。


決勝戦はまだまだ続く。


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