今のは、傷ついたよ

美佐はにこにこ笑いながらサイバトロン基地へとやってきた。
皆の前でくるり、と一つ回ってみせれば膝丈のスカートが翻る。

「なにそれ、コスプレ?」

一番食いついたのはラットルだった。
夏葉原等に行ったことのある彼だ、興味があるのだろう。

「違う違う!れっきとした本物!私の通ってる学校の制服!!」

美佐はふふん、と胸をはる。
彼女がこの世界にやってきた時はこの制服を着ていたが、美佐を保護(捕獲)したのはデストロンだったためコンボイ達は見ていなかったのだ。

「ふぅん…馬子にも衣装じゃん?」

「ちょっとチーちゃん酷くない!?」

やんややんやと騒いでいるとコンボイとライノックスが顔を出す。

「何を騒いでいるんだ?」

「美佐が制服を着てきたんだって」

エアラザーが美佐を撫でながら言うとライノックスは微笑ましそうに笑った。

「へぇ、似合ってるんだな。可愛いよ」

可愛い、の言葉に気を良くした彼女は照れ臭そうに頭をかく。

「そうかァ?こいつ幼ぇから服に着せられてる風にしか見えねェよ」

「ダーちゃんは後で膝カックンの刑です」

鼻で笑うダイノボットに美佐は笑顔を崩さず刑を言い渡した。

「てか似合うも似合わないも私これ着て学校行ってたんだよ!じょしこうせいだからね!」

「じょし…こうせい…」

それまで黙っていたコンボイが俯いたままそう呟くとはっ、と顔をあげる。
すると次の瞬間、彼は美佐の手をおもいっきり握った。
いきなり強い力で握られたものだから彼女はびっくりして小さな悲鳴を漏らす。

「美佐、君はそのままでいいんだ」

「…へ?」

「確かに君は破天荒な所もあるし女子らしくない所もある。だがな、そのままの君が一番素敵だ。更生なんかしなくていいんだよ!」

しん、と周りが静かになる。美佐は俯いてしまった。そして少しづつ皆が笑いを堪えだした頃にコンボイの肩をたたく一つの手。

「じょしこうせいの字は『女子更生』ではなく『女子高生』でござる…」

一番そういう事に疎そうなタイガトロンに突っ込まれコンボイは口をあんぐり、と開けた。
それと同時に周りが堪え切れず笑い出す。とにかく恥ずかしさと謝らなければいけないという気持ちに急がされた彼は美佐へと目線を戻した。
彼女は、俯いたまま涙声でか細く呟く。




(私そんなに女の子らしくない…?)
(本当にすまない!!)
(あー!泣ーかした泣ーかした!!)


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タイトルは「ひよこ屋」様より

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