素敵にアホな君へ
退屈な調査が終わりダイノボットは低く唸りながら船の中を歩いていた。
本当はもっと刺激的な、例えば戦いなんかできればよかったのにとぶつくさ文句を言いながら。
すると────
「あだっ」
「ダー?」
ちょうど曲がり角で美佐とぶつかる。
ダイノボットにとっては柔らかいボールが当たったような感覚だったが、彼女は金属に当たったものなのでその衝撃に尻餅をついてしまった。
「うう、いててて…ごめんねダーちゃんぶつかっちゃった」
「…俺は大丈夫だ。お前のほうがダメージでかいじゃねぇか」
彼は美佐の手を掴むと強い力で彼女を立たせる。
いきなりの感覚にバランスを崩しかけたがなんとか踏みとどまった。
「いつも以上にぼけーっとしやがって。その小さな脳みそで何考えてんだ?」
「小さくないもん!いや、実はね…」
ちょいちょいとダイノボットの耳を近くに寄せ、内緒話のようにこそこそと真意を打ち明ける。
「はぁ!?バク転がしたい!?」
あまりの突然の事にに彼は素っ頓狂な声を出してしまった。
「ダーちゃん声大きいよ!内緒話の意味ないじゃない!」
「ダー…。むしろ内緒話にする話題でもねェよなあ」
「だってみんなにサプライズしたかったんだもの…」
「サプライズもクソもねェよ」
はぁー…と、大きな溜息一つ。不本意だがここまで話を聞いてしまった以上、理由を聞かざるを得なくなった。
「…なんでバク転なんてしたいんだよ」
「だってみんなフットワーク軽いじゃん。私もいざっていうときの切り札にしたくて!」
ぐっ、と拳を握りキラキラとした瞳で見つめられ居た堪れなくなったダイノボット。
しょうがない、と少し付き合ってあげることにした。
「で、問題のバク転はできんのか?」
「やったことない」
真顔ですっぱりと答えた美佐に彼は思わずずっこける。
「でもねでもね!出来そうな気はするの!!」
「どっからその自信はくるんだよ…」
「イメージトレーニングはばっちりしたから!今からやってみるね!!」
よーし!と気合をいれて後ろに飛ぶ準備を始めた彼女にダイノボットは嫌な予感しかしない。
しかし、美佐はもう止まらなかった。
「美佐、いっきまーす!」
ぴょん、とジャンプをする。そして────
ゴインっ
鈍くも痛そうな音にダイノボットは反射的に目を背ける。
視線を戻すと、背中で着地をした美佐が痛みで呻きながら丸まっていた。
「あーあー。…大丈夫か?」
「せ、せなか…いきが、しに、く……っ」
彼女の喉からはヒューヒューという音が漏れ出しており、ダイノボットはこれは流石に危険かもしれないと美佐を脇に抱える。
再生カプセルにはいれられないが、とりあえずライノックスに相談しようとあまり揺らさないように気をつけながら足を進めた。
素敵にアホな君へ
(ん…?あれ、私バク転できてた…?)
(出来てねーよ。もうちょい寝とけ)
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タイトルは「ひよこ屋」様より