あなたの手に口づけを
するり、とリカの滑らかな掌がSansの骨張っている…いや、文字通り『骨』な彼の左手を優しく握った。

「へー。本当に骨だ」

「当たり前だろう。僕はスケルトンだからな」

「私のいた世界にはSans達みたいなのっていったら骨格標本くらいだしなぁ…」

「でもそいつら生きてないんだろ?」

「生きてたらめちゃくちゃ怖いわ。七不思議が44個くらい増えちゃう」

「そりゃ盛り過ぎだお前さん」

heh…、とすこし呆れたような笑みをこぼす彼に彼女は少しむっとする。
自分だっていつもくだらないジョークを言うじゃないか!
むくれた顔をしたリカの頭をSansがあいている右手でくしゃくしゃと撫でる。

いつだって子供扱いだ。
悔しい。────そうだ、少し驚かしてやれ。

俯いて静かになってしまった彼女に少し首を傾げるSans。
しかし次の瞬間、自分の右手に柔らかい衝撃を受けた。
ちゅっ、と小さなリップ音がSansのソウルに響く。思わず肩がビクリ、と跳ねてしまった。
いたずらっ子みたいに笑う、その顔を上げた彼女の瞳が捉えたのはいつも飄々として掴みどころのないスケルトン。
いつもと違うのは…その真っ白な顔に熱が集まりほんのりと頬が染まってしまっていることか。

「Ah〜…………マジか」
「いつもの仕返しよ。私だってこれくらい出来るんだから」

片手で顔を覆う彼に彼女はニマニマと笑う。いつもと正反対だ。

「…不意打ちは、苦手なんだよ」

「あら、そうなの?」

「お前さん……リカが思っている以上に僕は余裕なんかないからな」

そういうや否や、Sansは彼女の左手を掴むと自分の方へと引き寄せる。
そしてその華奢な指を見やると口を開け結構な勢いで噛みついた。

「いっ!?!?」

何が起きているかリカには理解できず、目を硬く閉じて痛みに耐える事しか出来ない。
痛みが走るその場所にぬるり、とした感覚が這う。リカから小さく「ひぃ…っ」と悲鳴が漏れた。

そして離れる彼の舌。先程の恥ずかしそうにしていた彼は何処へ。
いつもより満面の笑みを浮かべていた。

「噛むのは反則でしょ!?痛かった!!!」「煽ってきたお前さんが悪い」

「えぇ…うわ、あと残っちゃってるじゃん……。薬指にくっきり…………?」

ん?薬指?左手の?

「ねえSansこれ…いねえし!!!」

目の前にいたはずのスケルトンはいつの間にやら姿を消し、残るのは鈍い痛みと噛み痕だけ。
どうしようもなく照れ臭くなって、リカは静かにその赤い指輪に唇を落とした。



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タイトルは「ひよこ屋」様より
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