いつもの様に学校に行くと、楽しそうに話をしている二人が居た。ぎくしゃくしていた関係が戻って嬉しい反面、どうもモヤモヤする俺の汚い心。それがバレないように、笑顔を顔面に張り付けおはよう、と挨拶した。



「おはようユキト、昨日はありがとな」

「気にすんなよ、それより仲直り出来たみたいでよかったな」



おう、と笑った顔は眩しくて。俺も少しだけうれしくなった。
俺は空音ちゃんが好き。空音ちゃんはかずおが好き。だからなんだっていうんだ、それだけのことではないか。



「ユキト、放課後話がある」



いつになく真剣の表情なかずおに思わず息を呑む。わかった、の返事のあとすぐに何のはなしー、と空音ちゃんが入った。が、かずおはそれを適当にあしらう。
不満げな視線を送る彼女に俺も苦笑を浮かべ、かずおに助けを求めるように見ると、無駄にコミュ力のあるあいつはすぐに違う話題をつくりその話をなかった事のようにそらした。


―――……



「俺、杏ちゃんに告白しようと思うんだよね」



放課後先に空音ちゃんを帰らし、二人だけの静かな教室でそいつは随分と大胆な事を言った。
きっとかずおは空音ちゃんが自分に向けられている好意にすら気づいてないようで。なんて鈍感な奴だと思う。



「で、空音ちゃんを帰した訳とどういう関係があんの?」

「お前は空音が好きな訳だろ?で、杏ちゃんと仲が良いヒカル君とも仲が良い」

「協力してほしい」



お前この間、仲直りしたばっかでよくそんな腑抜けた事言えんな。
これ以上空音ちゃんを傷つける気か、色々文句を言おうと口を開いた時だ。



「俺ね、あいつが杏ちゃんの事であんなにひでぇ事言ったの何でか考えてみたんだよ」

「あいつ、杏ちゃんに中途半端な気持ちで近づいて傷つけてほしくなくて俺にあんな事言ったんじゃねえかって」

「だからけじめつけたいんだ」



それって、途中まで口に出してやめた。かずおがそう思うならいい。そう、勘違いしてるならそれでいい。
汚い心が俺を動かす。



「わかった、協力する」


ありがとう
(そういって笑ったかずおは俺の本性を知らない)




2012/09.29
話を暗くしてしまう



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