だんだんと赤くなりつつある空。そんな中やってきたのは俺を呼び出した杏ちゃんではなくユキトだった。なんでお前が、色々言いたい事はあったがなんだか気まずくてやめた。それどころかまともに顔すら見れない。今の俺は小心者って言葉がぴったりだった。本当に情けない。
そんな俺とは対照的に躊躇いなく俺の横にどかりと座るユキト。一瞬伺った表情はいつものヘタレなユキトとは思えないくらいにどこか凛々しかった。



「おい」

「…なんだよ」

「俺は空音ちゃんがが好きだ」



ぴしり、と心にひびが入ったかの様に痛む。もやもやする。
いきなりなんだよ、と言った声は想像してたものより小さくて相手に聞こえたかなんてわからない。
だいたいユキトが空音の事が好きだとか別に俺には関係ないはずなのに。自分の視線が泳いでしまってるのが嫌でもわかった。



「なぁ、なんでお前がここに呼び出されたか分かるか?」

「そんなの杏ちゃんが俺を呼んだから、」

「俺はヒカルに呼ばれた。俺思ったんだよおかしくね?って だって杏ちゃんだけならまだしもここにヒカルもいねぇんだもん」

「これって本当はあの二人が俺達の仲をどうにかしようって思ってやってくれた事なんじゃないかって」



あんだけあからさまに俺達お互い避けてたら、あのふたりも気づくよなー、とユキトは笑った。
でもそうだとしたら、なんで空音がいないんだ。辺りを見渡してみてもいつもの金髪は見当たらない。



「空音ちゃんならいないよ、さっきまで一緒だったけどお前の姿見た瞬間帰った」

「……別に気にしてねーよ」

「かずおが思ってる以上にお前結構顔に出てるよ」

「……」

「空音ちゃんな、お前の事誰よりも気にかけてる。誰よりも、お前を想ってるよ」

「ずっと空音ちゃんを見てきた俺が言うんだから間違いねぇよ」



にこりと笑ったこいつがこの先なにを言いたいのか分かった。ずっとこのままでいいわけない。俺が進まなきゃ何も状況は変わらないのだから。ユキトにお礼を言って駆け出した。





「俺は何してんだか…」



あの二人の仲を更に深めようとして。あのまま二人が離れ離れになって俺のところに少しでも靡いてくれたら、なんて。最低だ俺は。
あの時、確かに俺は空音ちゃんにチャンスなんじゃないか、と背中を押したフリをした。
分かってたんだ、空音ちゃんがかずおから目をそらすのを。分かってたんだ、分かってて聞いた。善人のお面を被って。最低だ。
でもやっぱり好きになった子の悲しい顔より、笑った顔のほうが好き。それは大切な友達のかずおも同じで。結局悪人になりきれなかった。全部中途半端。膝を抱え唇を噛んだ時ぼろり、と一粒瞳から流れ落ちた。



「お前はよくやったと思うよ」



上からふってきた声にいつから居たんだ、と問う。きっとこいつは最初から居たんだろうけど。
二度も野郎に泣き顔を見られるなんて屈辱ったらありゃしない。
もう一度よくやった、と頭をくしゃりと撫でられた。別にお前に言われなくても分かってるし、と皮肉を吐いたが撫でられた手は振り払えなかった。なんだかそれが心地好くて。もう少しこのまま、なんて俺もどうかしてる。



大切な人の幸せ
(本心から願えるようになるのはいつだろうか)



2012/07.16

友達以上恋人未満なユキトとヒカルんがキてる。



next→音色