黄瀬涼太の場合


朝、教室に入ると黄色い頭が此方に気付き近寄ってきた。
本当に犬みたい。大型犬。ほら、耳と尻尾が見えるもん。

「七月っちー!おはようっス!」
「おはよう黄瀬君」
「今日数学あるっスね、俺あてられたらどうしよう!あ、昨日黒子っちが…」
「……」

いつもみたいに楽しそうに話す黄瀬君。いやあ笑顔が輝いてるね。
この笑顔が曇るのかと思うと少し心苦しい気はするけど…ごめん今日は話しにのってあげれないんだな。

「…どうしたんスか?何か今日の七月っち変っスよ?」
「うん、私もね、昨日聞いて、初めて知ったんだけど……」

引っ越すことになって、
そう言うと見開かれる黄瀬君の目。
これ、ぎこちない感じがまた本当ぽくなってる気がする。え、私もしかして役者になれる!?

「…いつ、スか?」
「き、今日にはもう、」
「っ、遠いんスか?通えないほど!?もう、…会えないんスか?」

凄い剣幕で迫ってきたかと思ったら、ぼろりと黄瀬君の目から水が流れ落ちた。え、あの、黄瀬君、え…

「あの、あのね、黄瀬君」
「嫌っス!やっぱ聞きたくない!七月っち行かないでええええ!うわあああああ」

何だかまずい展開になってきた。
嘘だと言おうと口を開けば黄瀬君によって遮られる。うわあ号泣って…今をときめく黄瀬涼太が号泣って…!
黄瀬君の泣き声によってクラスメイトが何だ何だと集まってくる。

嘘なんて言わなきゃよかった…!!!

「あ、あのね…黄瀬君、」




号泣されて激しく後悔
(純粋すぎて良心が痛みます)



 



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