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「……どちら様ですか」

どこかで見たことある美人さんだ。でも私は悲しい事に結城君以外の男の子の友達なんて居ない。というか何で私のこと知ってるんですか。それ個人情報です。
目の前で私の個人情報をぺらぺらと並べ立てている背が高くて綺麗なさらさら黒髪和風美人さんをどこか達観しながら、どうしてこうなった、と頭を抱えたくなる。

そう、あれは数分前――――







カラリと扉を開けると中は廊下と違い落ち着く静けさが広がっていた。それもそのはず。ここは図書室だ。
雑誌を読んでいる人から勉強をしている人まで幅広く居て、その人達の邪魔にならないように目的のジャンルの本棚へと移動する。

お昼ご飯を食べ終えた私は図書室に来ていた。特に活字好きでもない私が図書室にくる理由は簡単。課題の参考になる本を探す為だ。
何故なら私の家には悲しきかな、パソコンがない。図書室か駅前の図書館に行くしか選択肢が無い。
それならばと暇な休み時間を利用してやろうではないかとクーラーが効いている静かで快適な図書室を訪れていたのだ。
あまりの快適さに今度から暇な時は図書室に来ようかなどと考えていれば目当ての棚を通り過ぎてしまい慌てて戻り、自分の身長より何十cmも高い上の方を見上げる。

左上から順に課題に合うようなタイトルがないか本の背表紙をざっと見ていく。
……やっぱり中々無いか
一つ目の棚を見終わり、骨の折れそうな作業だなぁと思いながら同じジャンルが置いてある棚の裏に回ればいい感じに今回の課題にあっているタイトルの本を見つけた。
…ラッキー!

しかし、最大の難解はその本が棚の一番高いところに収納してあり、私では届かなさそうだということだ。

「…………そいっ!」

うん、届かない。
わかりきっていた事だが背伸びして手を伸ばすも、やはり届かない。別段身長が低いわけではないが、背が高くてすらりとしているみやびちゃんを思い浮かべ、やはり憧れてしまう。
……せめて、今あの本を取るだけの身長が欲しい!
脚立か踏み台になりそうな物がないかきょろきょろと辺りを見回して探すが見つからない。
何でだ。図書委員さん仕事してください!

仕方ない…
ため息を吐いて精一杯背伸びして更に棚にかけた手にぐっと力を込める。
あと、少し…!
手を痛い程に伸ばして、もう無理という程に片足つま先立ちになる、と本の下の部分に指先が一瞬掠めた。

あ、と思った瞬間。

「わ、」

バランスを崩して身体がふらりと後ろに傾く。

まじか。
大人しく脚立借りれば良かった。もう遅いけど!身長があと少し高ければ。牛乳に相談すればいいのか!
これはどんな措置をとっても尻餅をつくか本棚に頭ぶつけるか…どちらにしろ痛いと思った私は特に抵抗らしい抵抗はしなかった。ほら変に力いれると逆に怪我するって聞いたことあるし。


「危ない」

ええいと半分自棄になっていると所謂イケメンボイスと共にとん、と背中を支えられた。
勿論私に結城くん以外の知り合いは(略)。

え、これ誰…









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