とりっくおあとりーと? | ナノ
※キーワード:脇・事後の言い合い
※言い合い…?



「テメーいい加減にしろよ、変態が」

枕に半分埋もれながら怒りの籠った視線を投げてる恋人は、可愛いけど可愛くない、なんて口が裂けても言えないほど可愛い。

「何、まだ怒ってんの?お前だって散々アンアンいっで!?」

先程までの恥態を茶化せば飛んできたのは殺意の籠った拳で。照れ隠しにしては随分と狂暴なそれさえも愛しいとか我ながら末期だ。

「てかさー、今日のは俺悪くないと思うんだよね。世間的に考えて」

お菓子くれなかったらイタズラしないとだろ?にんまりと笑う坂田に土方の顔は忌々しげに歪む。

10月30日の夕方に明日の非番は何の日か一度思い出したというのに、もし来たとしても日中だろうし朝イチで書類整理に行くつもりだからその時にでも山崎に買いに行かせればいいかと軽く流しそのまま失念してしまったのだ。日付が替わった途端乗り込んできたこの男が一筋縄ではいかないことなど身をもって知っていたのに、油断してたとしか言いようがない。

「それに軽いイタズラだったじゃん。ちょっと脇くすぐったくらいでガタガタ言うなよ」

わきわきと両手を動かしながら坂田は笑みを深くする。びくりと怯えるように強張る土方に、満たされたはずの嗜虐心が疼くのを感じる。

「しっかし感度いいとは思ってたけど、すごい乱れようだったなぁ」

延々擽られ、息も絶え絶えな土方に煽られて坂田はその手の動きをを性的な動きに切り替えて尚散々脇を弄り倒したのだ

「くすぐったいんだか気持ちいいんだか分からずに息も絶え絶えでビクンビクンしながらそれでも俺にしがみついてくるとか…止まれって方が無理だから」

終いには坂田に最奥を突かれながら脇を舐められ歯を立てられてイってしまった土方は完全に臍を曲げ、事後の後処理やらなんやらに甲斐甲斐しく動く坂田に罵詈雑言を浴びせるだけで枕から顔を上げようともしない。
坂田からすれば恥ずかしくていたたまれなくて顔を上げられない土方の照れ隠しが可愛いだけだし、新たな性感帯を発見できたことは思わぬ幸運だったのだが、さすがにかれこれ小一時間布団に入れてすらもらえないのは少しまずい。11月には辛うじてなっていないとはいえこの時期夜の冷え込みはキツい寒い。
愛しい恋人が文字通り目の前に転がってるのにそのぬくもりを感じられないのはあまりにも惜しい。新たに発見した性感帯については今後じっくりねっとり徹底的に開発しようと心に決め坂田は口を開いた。

「ひーじかーたくん。いつまでも拗ねんなって。なー銀さんいい加減寒いんだわ」

布団、入れてくれない?と甘えるように下手にでればいつの間にか完全に背を向けられていた布団が動き、ひょっこりと土方の顔が現れた。

「…とりっくおあ、とりーと」

恨めしげな視線で、拗ねたように口を尖らせた表情は酷く幼い印象を受ける。この状況で投げられた言葉の意味を、坂田は赤く染まっていく頬を見ながらしっかりと噛みしめた。

「生憎、甘い菓子は持ち合わせがないんで、甘いのは俺でいい?」

布団のなかに入れてくれたら、思いきり甘やかしてあげる。さらりと黒髪を撫でながら笑うとやっと正面から見れた土方の顔はまたもや反らされてしまう。

「……勝手にしろ」

それでももぞりと布団が動き、坂田の分のスペースが空いたから、たぶんその答えで正解だったのだろう。
するりと布団に潜り込み、愛しいぬくもりを抱き締め赤く染まった項に口付けを落としながら坂田はそっと笑う。あまいあまい恋人との時間はまだ始まったばかりだ




とりっくおあとりーと!


(あまいあまいこいびとと、あまいあまいひとときを!)