元々酷く優しい男だからその恐怖すら抱え込んで生きて、でももう二度とそんな思いしたくなくて抱え込むこともやめてしまって。 でもふと見かけた子どもの生き方は酷く危なっかしくて見てられなくて。ついうっかり手を伸ばしたら思いの外しっかりと握り返されちゃって、あたたかな手はやっぱり嫌じゃなくて、いつの間にか当たり前みたいな顔で傍にいるようになった子どもたちが両手を引いてグイグイ前に進むから坂田もいつまでも立ち尽くしていられなくて。 顔をあげたら視界は一気に広がって、その中で自分の手の届く範囲にあるものを今度こそ護り通そうと必死に手を伸ばす、そんな坂田が好き だ。 楽しくなくてもいいから、生きていてほしいなんてエゴを押し付けてしまうくらいに再び抱え込んでしまったものは大切で、その大切な人のためにと木刀を握り強大な力に立ち向かうその凛とした背中が好きだ。 ただ、忘れないで欲しいのはあなたのみつけた大切なものはあなたに護られるだけじゃなく、あなたをまもるために強くなるってことで。 四天王篇で新八がなぜなら僕たちがあんたを護るからだ的な台詞を吐いたときに眩しいものを見るみたいに細められた瞳は泣きそうだったのかもしれないなって。 背中を預けて戦える相手は今も昔も沢山いるだろう。あなたのことを鬼だ戦神だなんてあなたの強さに縋るような人が昔は沢山いただろう。 でもさ、もうあなたにはあなたを護りたいって思う人が沢山いるよ。今、あなたの護りたい人は、あなたのことを護りたいと思ってるよ。あなたは沢山の人に愛されてるよ。 師匠を背負えるように成長するのが弟子の役目だって月詠が言ってたけど、侍の道を学ぶためにあなたの元へやってきた子どもは立派に成長しているよ。 先生があなたを背負ったように。あなたが彼らを抱え込んだように。 彼らはもうあなたを支えられるくらい大きくなっているよ。 だから、もう怖がらなくていいよ。失うことを恐れて立ち止まらなくていいよ。一人で背負わないで。彼らにも分けてあげて。きっとまた手を引いて、背中を押して、歩き出すきっかけをくれるから。 あなたと一緒に、前に進んでくれるから。 あなたはもう、ひとりじゃないから。 |