4月1日 | ナノ

※会話文ばっか



「アレ?…ふーくちょーさんっ。そんなに急いでどこ行くの?」

「……あァ?」

「おお、見事なクマだなコノヤロウ。」

「…そりゃ3日も寝ずに書類捌いてりゃあクマも出来んだろ。警察舐めてんじゃねーぞコラ。」

「…副長さん。ちょっとそこの団子屋で銀さんと団子デートしよっか。」

「ふっざけんな。つーか今日はアレか。厄日か。連日立て続けに何かしら起こるのは総悟の呪いかなんかか。」

「おぉ、めっちゃイラついてる?つーかおめぇ、今自分がどんな悪人面してるかわかってる?ホラそこのガキびびって固まってるよ。そういうときはとりあえず甘味だろ。時には休憩も大切だよー副長さん。(グイグイ)」

声をかけられ、振り向いたら視界に入ったのは銀色の男。べらべら喋りつつ、ぐいぐいと引っ張っていく強引さにむしろ感心しながらも土方は腕を振り払った。


「やかましわ!余計なお世話だっつーの!
…つーかなんなんだマジで。総悟は元気にバズーカで店壊すし書類の山丸投げしてサボるし連れ戻しても消えるし。近藤さんは相変わらずゴリだし女のケツ追いかけ回してるしゴリだし山崎は目を離すとミントンだぁカバディだぁ殴っても殴ってもキリねぇし。息抜きに市中見回りに出た途端コレだ。
…つーか何がデートだ。誰がニートに奢るか。」

「ニートじゃありません〜。自営業ですゥ〜。ていうか全部声に出てんだよお前。いいから来いって。」

「自営業たァ聞こえがいいが実質開店休業だろうが。奢らねぇっつってんだろ!」

「まぁまぁ。いーじゃねーか高給取り。銀さん今ちょっと糖分が不足してんだよでも金ねぇし。仕事こねぇし。で、たまたま出会ったお前に団子奢って貰おう。と」

「誰がてめぇなんぞに奢るか。帰る!」

「あっ待て俺の財布ぅぅぅ!!」

「誰が財布だこるぁぁぁ!!!」


がばちょと今度は全力で抱きついた坂田を振り払えず、結局土方は団子屋に付き合わされるはめになった。


「いやぁ、悪いね副長さん。こんなに団子おごって貰っちゃって。」

「あー、疲れてっからか?なんかすっげームカつくふわふわした毛玉が見える。斬っていいかな。斬っちゃっていいかなコレ。」

「団子屋の店先で流血沙汰たぁ物騒だねぇ。」

「誰のせいだ誰の!」

「まぁまぁ、時には休息も必要だよー?特にお前みてぇに…なんだっけ、わーかーとりっく?」

「ホリックだろホリック。つーかそろそろ正午か…。さっさと食い終われ。俺は帰る。」

「マジでか。……まぁ、いいか。だいぶ顔色も良くなったし。」

「…あ?」

「や、だってあんなフラッフラ歩いてたらいつ倒れるか心配すんだろ」

「しんぱい?」

「そ。なに、マジでたかるためだとでも思っ…土方?」

(シンパイ?しんぱいって…心配、か?)

「…―〜っ!?」

頭で理解した瞬間、顔に熱が上がった。

「土方?」

「ななななんでもねぇ!食いきったな?俺はかえっ…!?」


勘定はここに、と札を置いた手を、武骨なあたたかい手に捕まれた。


「なぁ、土方。」


なんだ、と視線を向けると

(――なんだ、その目、)

見たこともない真剣な瞳にかち合った。


「なぁ、土方。」

「な、なん…っ、」

「好きだよ。」

「え、――ッ?!」


(――すき?すきって…?好きってアレか。恋人とかが囁きあう甘ったるいアレか?え、でもなんでコイツが、俺、を…?だいたい好かれるような要素はこれっぽっちもないのに、てか男同士って、え、アレ?なんで俺、嫌じゃねえんだ?まさか、俺も?――)


ゴおおぉン!ゴおおぉン!ゴおおぉン!―――


「!!」

「お、セーフか?」

「…セーフ?」

「アレ?気付いてない?今日はなんの日か。」

「今日…?あ、」


そうだ、今日は…


「もしかして、本気にしちゃった?土方くん。」

「ーーーっ!!な、わけ、ねぇだろッ!かっ、帰る!」



「あーぁ、帰っちまった。」


羞恥に顔を染めた土方を見送った銀時は、ぽつりと呟いた。


「このへんの正午の鐘は、5分遅いんだよー。土方くん。」


ほんと馬鹿だね。まぁそこが可愛いんだけど。

にやりと口を歪めて歩き出す銀時。嬉しそうに、楽しみを見つけたように、足音は軽やかだ。

(あの反応、満更でもねぇってこと…だよな?)


やがて銀色は街に溶け込む。


愛しい愛しい獲物の落とし方を考えながら