おっさんと押しかけ時限爆弾 | ナノ
三咲んからのお題「意趣返し」「かっこいい土方くん」

草汰のぱっつちは『大学』で【トランク】【受け入れる】を入れて140文字以内で銀土小説を書きましょう。 #gh_odai http://shindanmaker.com/109449

銀八 土方くんは、
26歳 × 17歳です。
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土方君が20なので銀八は29です


*****



「あー、…ちわーす、誕生日プレゼントです」

読めない表情は記憶の中よりやや精悍で、棒読みの声音はほんの少し深みを帯びて。夕暮れとトランクを携えた時限爆弾が、玄関先に立っていた。



三連休の初日。少し肌寒い外気をぬくぬくの布団でガードしのんびり朝寝を楽しんで、腹の虫が文句を言い出す頃にのっそり起き上がり適当に何か作って適当にかき込んで、そこそこ家事をこなしあとはビールでもあおりつつダラダラする様な普通の休日。になるはずだった夕方。洗濯物と布団を取り込んでつけっぱなしのテレビの内容を右から左に流しつつ、晩飯をどうするか悩みながら新たな煙草に火をつけた、瞬間のことだった。

突然、ピーンポーン、と間延びしたチャイムが響いた。誰か来る予定はなかったのだが、と休日だというのに1度も鳴ることのなかった携帯にチラと目をやり、急かすようにもう一度鳴ったチャイムにはいはい今出ますよーなんて言いながら玄関に向かう。そう言えば今日初めて喋ったわ、なんて寂しい独身男性そのものみたいなことを考えて。一瞬だけ脳裏を過ぎった濡れ羽色にちくりと感じた小さな痛みには気付かなかったことにした。

「はーい、新聞なら間に合ってるけど、」

ちょっとやけくそ気味に確認もせずにドアを開け放ち、オレンジの光に照らされて艶々と輝く黒が、網膜に焼き付いた。ぽかんと空いた口から咥えていた煙草が落ちたことにも気付かない程惚けていたら、夕暮れの輝きよりも強い光を放つ瞳に貫かれ、冒頭に至る。

「ひじ、かた?」
「…ども。」

ぺこ、と頭を下げたかつての教え子にハッとして真っ白になった脳みそを慌てて再起動し、久しぶりだな。どうした、突然。と引き攣った笑みを無理くり取り繕った。

「突然も何もアポは取ってたろ。忘れた訳じゃねぇだろうな。約束したろ。2年前」

憮然とした顔でそれだけ言うと邪魔するぞ、とさも当然の様に家主を押し退けて部屋に上がり込む突然の来訪者。慌てて後を追おうとして、やっと玄関先に転がった煙草を思い出し、殆ど吸えなかったそれを拾い上げて握り潰した。

煙草を灰皿に突っ込んでから後を追えば土方は興味深そうな顔で部屋を見回しているところで。そこそこ片付けていた部屋の隅にどんと置かれた大きめの旅行用鞄が圧倒的な存在感を放っていた。

「ちょ、おい土方?本当にどうしたんだよ。」
「この部屋、アンタの匂いがする。」

すぅ、と息を吸い込んで、少し柔らかく笑みを浮かべるマイペースさがひどく懐かしい。そういえば最初に国語科準備室に足を踏み入れた時も彼はこんな風に笑みを浮かべていなかったか。

「とりあえず、コーヒーでも飲む?」
「もらう。」

そう、問いかけた時ぱっと明るくなった表情も、そういえばこういう感じだったな。と柄にもなく胸が苦しくなった。

「…で?」
「で、というと?」
「アポなしで、卒業後まるで連絡なかった元教え子が唐突に元担任教師の自宅に大荷物抱えてやって来たら何があったかと思うだろ。」

砂糖の数を聞けばいらないと言うので客用のマグでブラックのまま出してやれば、なんかすげぇいい匂いがすると鼻をひくつかせながら土方が呟く。ちゃぶ台を挟んでミルクと砂糖をぶち込んだ自分用のマグをすすればちょっと引いた顔をされてしまった。解せぬと思いながらも話を振ってやれば、土方の眉間には瞬時にくっきりと深い皺が刻まれた。

「覚えて、ねぇんすか。」
「何のことだかさっぱりだけど?お前が高3の時?なんかあったっけ。」

拗ねたような物言いに、ガシガシと後ろ頭を掻けば土方の表情が固まる。と、ニヤ、と悪い笑みを浮かべた。

「…アンタ、嘘つく時頭の後ろ掻いて目を逸らす癖があんの、気付いてるか。」
「へ、」

勝ち誇ったような笑みに心当たりがないでもなく、ぐ、と言葉に詰まれば、アンタが俺を振った時に言ったんだろ、と複雑な色をうまく隠して土方がうっそりと笑う。

「アンタが言ったんだろ。ガキに手を出す程飢えてねぇ、せめて成人してから出直せって。そんで?誕生日にぼっちで自宅に籠ってる三十路が目と鼻の先に迫ったおっさんに恋人がいるとは思えねぇが、一応聞いとく。アンタ今付き合ってる奴とかいんの。」
「ちょっとちょっと黙って聞いてりゃ寂しいおっさんの傷口に塩塗りこみやがって俺だって恋人の1人や2人、」
「え、嘘いんの?」
「…いねぇ、けど。何でそんな知った風なの。認めるの癪だろって話だよ。この歳になるとおめでとうメールの一つもこないんだぜ。誕生日なんていい加減めでたいことでもねぇよ」
「確かな情報源から散々リサーチしたからな。つーか意外。教え子からメールとか来ねぇの。」
「…誰だそんなこと言いふらす奴。メールだのらいんだのは連絡用に教えてっけど、誰もおっさんの誕生日なんて興味無ぇんだよ。寂しいこと言わすな。」

ホント誰だよ、んなこと言ったヤツと剣呑な目つきで睨んだら、内緒。なんて小首を傾げて笑う土方がうっかりエロ可愛くてぱっと顔をそらした。元々かなり整った顔をしているとは思っていたが、しばらく見ない間に少年っぽさが抜けてますます男前が上がり、そこにどこで覚えて来たのか愛嬌と余裕が相まって壮絶な色気となりだだ漏れてる。いつもいっぱいいっぱいで、ただただ真っ直ぐ俺を見つめて隠すことなくビシバシ好意を叩き付けてきた瞳がそんなに茶目っ気たっぷりに弧を描くなんて、今まで知らなかった。なんとなく負けた様な気がして悔しくて視線の先にあった携帯を睨みつける。鳴らない携帯は充電器に差しっぱなしで、もしかしたら同僚から呑みの誘いでもあるかと思ったが今日はそれも無さそうだ。なんてつい現実逃避してしまう。

「アンタ、やっぱ相変わらず秘密主義なんですか。」
「なにそれ俺生徒にそんな風に思われてたの?えっ、恥ずかしいんだけど。」
「俺らの時でもアンタの誕生日知ってるやつなんて殆ど居なかったですよね?俺も知ったの偶然でしたし。俺後輩に聞かれましたもん。」
「へぇ、情報源ってのは後輩かよ。で、教えてやらなかったの?」
「いやまぁ後輩だけじゃねぇけど。あわよくば今日アンタにおめでとうって言うのが、俺だけになんねぇかなって思って?」

とんでもなく熱烈な発言にバッと顔を上げればそれはもうにっこりと、イケメン面をとろりと甘く溶かして笑う土方くん。どきりと、大きく心臓が跳ねた。

「お誕生日おめでとうございます。例えアンタが寂しい三十路へのカウントダウンが始まったことに絶望していようとも俺はめでたいと思うので祝わせてください。」
「…そりゃあ、どうも。」

デレと共に吐き出された痛烈な毒に寂しい独身男性は大ダメージですほんっと。いや別に期待とか全然してなかったけど。いやホントに。出会い頭にぶつけられた言葉が今になって思い出された。お前プレゼントならもうちょっと優しくとかしてくんねぇの。なんて皮肉は口から飛び出る前に霧散した。ふと目に入った土方の手が、握りしめすぎて小さく震えていたから。

「で。用件なんですけど。」
「…おう。」

居住いを正す土方につられて、ぐ、と背筋が伸びた。久しぶりに見た瞳孔の開いた鋭い眼光はその奥の変わらぬ熱を隠すことなく真っ直ぐ銀八を射抜く。今までの取り繕ってたらしい余裕がどこかに吹っ飛んでしまった土方はやっぱり昔と変わらなかった。かわいくて、かっこよくて愛しくて焦がれるほどに欲しくて仕方なかったけど臆病な俺には終ぞ手を伸ばせなかったきれいな子ども。目の奥に揺れる熱を手に入れる夢を、果たして何回見たことか。いつか見た緊張で強ばった表情。やっぱりあの時の様に土方は何度か言い淀んでから、すうと大きく息を吸ってからそっとその口を開いた。

「リベンジを、しに来ました。まだ学生だがもう子どもじゃねぇ。アンタのどこに惹かれるのかなんてずっと考えてるのに全然分かんねぇけど、写真をたまに見せてもらってただけで久しぶりに会ったけど、そんな奴にこんなこと言われても迷惑かもしんねぇ、けど。だけどそれでも、俺は銀八が好きだ。ずっとずっと、変わらなかった。変えられなかった。諦められなかった。だからそろそろアンタも観念して、俺を受け入れちゃあくれねぇか。」

ずっとずっと欲しかった。手を伸ばせなかったのはただの意地だ。教師として、生徒に手を出すことはできない。その裏できっと大人になった彼に捨てられる日に怯えていた。傷つくのが怖くて手をとることが出来なかった意気地無しの俺は、情けないことに奇跡的にも再び訪れたチャンスで、とっさに頷くことさえできないらしい。

「まぁそういう訳で3連休中泊めてくれ。あ、暇だってのは知ってっから。」
「…はい?」
「いきなり久しぶりに会った奴に告白された所で俺の今までとか現状をよく知りもしねぇでアンタが頷くとは思ってないし、俺もアンタのこともっと知りたい。な?時間、いるだろ」
「いやいやいや」

全てまるっとお見通しだと言わんばかりと口ぶりにちょっと待ってとストップをかける。が、まずはネタばらしからな、なんて土方はマイペースこの上ない。おいコラ、テンパったおっさんの情報処理速度なめんなよ。

「俺のこと、綺麗な顔で性格も嫌いじゃない。頭も切れるし運動もできる、真面目で食の嗜好さえ目を瞑ればかなり優良物件だって言ってたって聞いた」
「もしかして、…とっつぁんの愛娘か!」
「徳川先輩の妹のそよ姫もだけどな」
「アイツら…どうりでやたらお前の話聞きたがるし写真見せてくると…!」

情報の出処はイイ所の令嬢でありマイペースと世間知らずを併発してZ組送りとなったそよと、惚れっぽいくせに惚れた相手に一直線で娘を溺愛する父親が行き過ぎた牽制をして生徒に被害が出そうになり、理事長判断によりZ組に放り込まれた栗子だったらしい。親族の剣道部繋がりで面識のあった土方を彼女らは憧れの先輩と捉えてる風でどこからか情報を仕入れてはこちらに話を振ってきて俺から見て彼はどんな生徒だったか聞きたがった。大学でも剣道を続ける土方が大会に出た時にわざわざ応援に行き後日きゃあきゃあと写真を見せてきたり、どうやって手に入れたのか大学での普段着の写真を見せてきたり彼がどんな風に大学生活を送っているのか語ってきたり、そういえば割と絶え間なく土方の情報を届けてくれていた。土方と同じクラスにいた強烈なストーカー共と比べれば熱心なファン程度だと思っていたが、どうやら裏があったらしい。別に頼んだ訳じゃねぇよ。と土方がアイツらが勝手にぱっつちくっつけ隊を名乗り勝手に協力してくれてるだけ、なんて聞きたくなかった補足説明をくれた。そういやたまに土方の話をしてる時に異様にギラついた目でこっちを見てたり頭を抱えて悶絶してたわ。土方先輩カッコイイ、だと思っていたらどうやら違う理由があったようだ。教え子が腐っててしかも自分が標的になってたなんてできれば知りたくなかった。

「んで、男同士の恋愛には偏見も抵抗もないし好きになった奴が同性だっただけだろって言ってたって話と、何年か前に教え子に告白されて、お断りしたけど逃がした魚は今思えばだいぶ大きかったんだって話と、好みは年下で黒髪の短髪でちょっと食の好みが偏ってる勝気な子って」
「まっ…て、待て待てほんとに待って!?お前それ誰から…っ、流石に生徒にそこまでぶっちゃけねぇけど!!」
「…アンタ、酒が入ると延々とその黒髪のかわいこちゃんの話してるって、兄貴が。」
「」

今度こそ、頭が真っ白になった。

「流石に家族に言うつもりはなかったから、バレてないと思ってたんだけど、事実卒業して家出るまではバレてなかったけど。卒業後兄貴が休みに飲みに出かけるにつれてなんか視線が生ぬるくなってって、ある日突然いい加減苦笑いされんだけど。アイツ未練タラタラだぞって。潰れる寸前小さい声で兄貴を見て、声は出さずに誰かを、呼ぶんだって。だから、脈がねぇとは元々思ってなかった。」
「」
「俺が、あん時誕生日知ってたのは兄貴が言ってたの聞いたからだし、今日だって暇してっから押しかけやれって太鼓判押されて来たんですよ。…おい、聞いてっか。」
「おま、ぇ、あ…兄貴…?」

肩を揺すられようやく再起動した俺に土方はいたずらが成功したガキみたいな得意げな表情を浮かべた。

「土方為五郎。教師なりたてからの同期だって聞いてますけど」

告げられた、休日に飲みに出かけるくらいには気の合う同僚の名前とホントに気付いてなかったんだな。なんてちょっと嬉しそうにはにかむ土方の威力で血圧が下がったり上がったり忙しい。頭も痛いからもしかしたら俺は誕生日に死ぬのかもしれない。

「はぁあっ!?だって、アイツそんな素振り、」
「まぁ俺だけ異母兄弟で歳も離れてるんで顔は似てないかもしれませんね。あと俺奇跡的に1度も兄貴の受け持ちにならなかったから知らないのも無理ないです。」
「…そういや、昔、歳の離れた兄弟がいるって、」
「はい。」
「」
「その兄貴からいい加減鬱陶しいからあんなんでいいならさっさと貰ってやってくれって、盛大に背中押されてるんで。あとアンタがどんだけ酒癖悪いのか実際に1回見てみろって言われてます。甘党の惚気は砂糖通り越して砂を吐くって。アンタいつも何言ってるんですか。」
「や、あの…記憶にないです。」

酒を飲みすぎると酔ってた時の記憶が曖昧になるタイプの銀八は、職場の飲み会でも上司の酒はのらくら躱してちびちび自分のペースで飲むようにしている。が、為五郎と呑む時にそんな遠慮はしていられない。同い年にして既婚者である為五郎は嫁さんを大切にしていて惚気が凄いのだ。更に2歳の娘にデレデレで幸せいっぱいを絵に描いたような脂の降りた顔を差し向かいに飲んでいると報われぬ恋心を捨てられず何年もうじうじしてる身としてはどうにも眩しくて仕方ないのだ。しかし愚痴として聞かせられるような話でもない為どうしても飲みすぎてしまい、結果記憶を飛ばすことも少なくはなかった。何か変なこと口走らなかったかと聞いた時、なんとも生暖かい表情でいいやと否定してきた為なにもやらかしてないとは思っていなかったが、知らなかったとはいえアンタの弟が可愛すぎて諦められなくて辛いと兄に泣付いていたなんて。週明けに俺は一体どんな顔をすればいいんだ。

「まぁ、兄貴が嘘をつくとは思えなかったので、押しかけて来ました。」
「………しにたい」
「受け取り拒否も返品も受け付けておりませんので悪しからず。」
「…お前いつの間に包囲網敷いてんたんだよ…コミュ力MAXなイケメンとかどんなチートだよ…」
「アンタがうじうじ後悔してる間に。つっても殆ど偶然だけど。」

徳川は卒業校は被っていても大学の剣道部で知り合った先輩だし、とっつぁんの娘が銀八のクラスだって聞いたのは高校の剣道部のOB会だったという。土方の恋路を傍から見続けていた沖田、山崎辺りも悪ノリで1枚噛んでいたらしい。土方の大学生活がやたら耳に入って来たのはそれでか。兄の為五郎に至ってはバラしたのは銀八で、しかも名前は出していなかったらしい。曰く黒髪のかわいこちゃんが誰か気付いていつまでもうじうじしてる同僚とそんな情けない男を必死に追いかける弟を見て弟の背を押すことを選んだのは為五郎本人だ。

「…っつうことで、暫く世話になっから。」
「あのね、アイツに何言ったかもアイツが何言ったかも知んねぇけど、お前のこと振ったくせにずっとうじうじしてた奴の所にのこのこやって来るとか、どうなっても文句言えねぇと思わない?男だろうともっと危機感持てよ。」
「アンタが無理矢理俺をどうこうする度胸があるとは思えないし、押しかけプレゼントな俺としてはそれでアンタが手に入るなら願ったりかなったりですね。…ああでも、」
「…何。」
「初めてのチューもえっちも、俺はできれば好きな人じゃなくて恋人になったアンタとしたいです。ハジメテ全部アンタにやるから、俺をアンタの最後の恋人にしませんか。」
「…ずるすぎねぇか、それ」

じわじわ顔を上る熱で顔をあげれず机に視線を落としたまま心臓が過労死する、と零せば、こう言っときゃアンタ迂闊に手ぇ出せないでしょ、なんてどこまでもお見通しな土方が笑う。

「もういい、降参、降参ですー。これ以上おっさんをいじめるんじゃねぇよ」
「子どもの純情弄んだ意趣返しとしちゃ、甘くて軽い仕返しだと思わねぇ?」
「如何わしい言い方やめて。」
「で?思い出話は今にする?後にする?」

小首を傾げあざとく笑う小悪魔に、にたりと出来うる限りいやらしい顔で笑ってみた。

「とりあえず、今知りたいのはプレゼントの包装の下の中身かな」
「ははは、おっさんくさ」
「そんなおっさんがいいんだろ?」
「おっさんじゃなくておっさんなアンタがいいんだよ。」
「………言ってて恥ずかしくない?」
「恥ずかしくないわけないだろ。でも、俺の言葉で耳まで赤くなってるアンタは可愛い。三十路へのカウントダウン開始に絶望してるアンタのこと、愛でたいって言っただろ」
「も、お前ほんと黙って」
「うるさい口なら塞いで黙らせればいいだろ。」
「返品不可だって、さっき言ったな?ホントに手放せなくなるからな、あとで文句言うなよ?」
「届いてる時点で返品されるつもりは無いんで。…それなりに確証あって朝家出て、電車で1時間も掛からないボロアパートからここに来るまでに日が暮れたんですよ。本当は、もっとちゃんと祝いたかったのに。」
「え、」
「こちとら1度振られてんですよ怖くないわけ、ないだろ。」
「土方、」
「包装解いて中身を暴きたいなら、ちゃんと言ってくれませんか。ずっと、ずっと聞きたくて、だから俺はここに来たんです。」

震える言葉に思わず手を伸ばす。そっと触れた髪は思い描いたよりもずっと指通り滑らかで、ゆっくり撫でれば頭のてっぺんまで熱を持っていた。

「好きだよ、土方。ずっと好きだった。絶対大切にするから、俺に貰われてくれる?」
「…はいっ」

見開かれる瞳は涙の膜が貼っていて、見とれる間もなくぐしゃりと歪んで綺麗な雫がこぼれ落ちた。 そっと頬に手を当て軽く上を向かせると涙に溶けた瞳がうろ、と視線をさ迷わせ、恥じらうように瞼に隠れてしまう。どうすればいいのかわからないからどうにでもしてくれと、無防備にさらされた、期待を隠しきれない僅かに怯えた覚悟の表情に、銀八はそっと優しく唇を重ねた。







その後、舌で唇を割り侵入してみれば涙の味のキスに恥じらう反応があまりにもうぶ過ぎておっさんのテンションゲージが振り切れてしまい、ひょいとプレゼント抱えて布団に運ぶとやや余裕なく()包装バリバリ剥いで誕生日が終わっても年甲斐もなく張り切り何度も休憩を挟みつつ結局ロスタイムいっぱい身も世もなく啜り泣き息も絶え絶えに許しを請うプレゼントの中身をおっさんらしくねちっこい手練手管で、心ゆくまでまで貪ってしまい、残りの連休を起き上がることもままならない恋人の世話に費やされることになることを、銀八はまだ知らない。

幸せいっぱいの何度目かの甘いピロートークでどういう流れか、ぱっつちくっつけ隊、もとい正式名称ぱっつちをくっつけて2人を幸せにし隊の創設者兼隊長が土方の兄、為五郎であり、ついでに言えば隊員は情報源の2人だけではない聞き、本気で連休があけなければいいと願うことになることも、もちろん銀八はまだ知らない。





さかた誕生日おめでとー!しあわせになりやがれ!!