不眠症土方と添い寝屋坂田 | ナノ

寝汚い坂田と不眠症の土方かわいい。坂田の体温が隣にあると寝れちゃって万事屋さんに添い寝を依頼しちゃう系の話が読みたい


から続きまして

ある日、真選組に上様警護の命が下る。またスキーやキャバクラかとうんざりとした表情の土方に近藤は顔を輝かせて言う「違うんだトシ!これ正式な祭典の護衛!先の一件が認められたんだよ!」土方は思わず目を見開き煙草を取り落とした。普段、城内、幕臣に関しての警護の任は見廻組に一任されている。常であれば対テロ組織である真選組は会場の巡回や不審者のチェックなどに走り回る所だというのに。これまで幾度となくお守りで奔走させられてきたが努力は思わぬ形で実を結んでいたらしい。

「つまり、だ。ここで、功績を残せば」
「ああ、真選組がますます磐石なものとなるだろう。」

ぐ、と拳に力が籠った。上様の警護という大役を果たすことができれば、芋侍と嘲笑う幕臣共に一泡吹かせることができる。そして、近藤の夢を、自分達の真選組を、ますます確かなものにできる。

「と、いうわけで、だ。警護の計画案はトシに一任する。いつも通り、頼んだぞ。」
「ああ、任せてくれ近藤さん。蟻の子一匹寄せ付けない完璧な計画案を立ててみせる。」

ぽん、と肩を叩いた近藤に土方は力強く頷いた。この人の真っ直ぐな信頼に応えられる人間でいたい。それはもう随分と前から土方の大部分を占めている願いだった。



2週間後。



「あの…と、トシ?」
「あ?んだよ近藤さん。」
「そそその、お前最近根詰めすぎじゃね?殆ど寝てないだろ」
「仕方ねぇだろ祭典まで時間がねぇんだ。ありとあらゆる可能性を潰して完璧な計画案を立てなくちゃならねぇんだ。寝てる暇なんてねぇよ」

そんなこと言うために呼んだのか、と不機嫌そうに煙草を揉み消す土方に近藤は冷や汗を垂らした。例の警備計画案を任せてから文字通り寝食を放り出して仕事に打ち込むようになった土方は常にそういうメイクなのかと間違う程の隈を貼り付け煙草の本数が増し頬が削げて眼の鋭さで人を殺せるんじゃないかというほどの悪人面なのだ。

「お前一人で抱え込まなくてもさぁ、」
「嫌と言うほど会議してるしアンタにだって相談にのってもらってる」

あ、ダメだこれ。近藤は悟った。これ聞く耳持たない時の声だ、と。仕事人間と思われがちな土方は確かに仕事には熱心に取り組むが意外と息抜きが上手い。真剣に取り組むべきものとの力の配分が上手いというのか、効率よく物事を進めることが上手くある程度実質的にも精神的にも余裕を持たせることに長けている。煮詰まっている時もそれ察してやんわり止めるとわりと素直に言うことを聞いてくれるのだ。だが今回はいつになく切羽詰まっているように見える。

「そんなに慌てなくとも、時間ならまだたっぷりあるだろう」
「ねぇよ」

バッサリと切り捨て新しい煙草に火を点ける土方に近藤はきょとんとカレンダーを見やる。

「…祭りまで、あと一月以上あるぞ?」
「ああ、そうだな。しかし隊士に計画を叩き込んだり他の部署との擦り合わせやらなんやらしなきゃならないことは山積みだ。それに祭りでテロを企てそうな連中にも警戒が必要だし当日まで一刻の猶予もない。解ってんのか近藤さん。今回の任務、絶対に失敗は許されないんだぞ」
「いやいやいや、確かにやることは一杯だけど、もしかして一月先までそんな生活続けるつもり!?」

名誉ある任務だということは十分に理解している。確かにプレッシャーは感じるが元々武士ですらなかった自分達が上様直々に指名された誇らしさと使命感で一杯だ。何があっても上様の髪の毛一本傷付けさせやしないと真選組全体が気合い十分。日々の鍛練にもより一層力が入っている。しかし土方はその上を行くどこか鬼気迫るものがある。

「俺はな、近藤さん。今回の任務で俺らを嘲笑った奴らを見返してやりてぇんだよ」

そんで、真選組をあいつらがどう言おうが揺るがないものにしたいんだと語る瞳は決意に満ちていて、こうなったらテコでも動かないことを近藤は嫌と言うほど知っているのだ。

「……わーかった。確かに上様直々のご指名だ。悔いのないよう仕事したいもんな。」

わかってくれたかと息を吐く土方にただし、と釘を指す。

「食事と睡眠はしっかりとること!本番で倒れられたら元も子もないんだからな!」
「いやでも」
「体調管理も出来ない奴に指揮を取られても失敗するだけだぞ、トシ」
「…わぁったよ」
「てかほんと、何時間睡眠だったらそんな黒々とした隈が出来るの。昨日何時間寝た?」
「……」
「トシ?」
「………に…さ、3時間」
「今2時間って言わなかった!?今俺の顔見て慌てて誤魔化したよね!?」

だって目を剥いたゴリラみたいできも…怖かったんだもんとは流石に言えず、土方は局長命令で毎日最低6時間は寝るようにと義務付けられたのであった。

「…くそ、」

その後、ていうかもう今日はトシは半休!休息も取らなくちゃいい計画案なんて出ません!ちょっとは寝ないとトシが見廻りに出る度に子どもが怯えて泣きわめくって苦情の電話が来るんだからね!!と近藤に無理矢理半休取らされた上に鼻息荒く自室に押し込められてしまった土方は重々しく溜め息を吐いた。ちなみに苦情が来すぎて電話番の隊士達が随分前から近藤に泣きついていたのは土方の知らぬ話である。

急ぎの書類はなかったよな。とざっと思い返してみたが特にこれといった物は思い当たらず土方は漸く仕事を諦めた。さてこれからどうするか、となんとなく自室を見回してみる。文机に山となっていた書類は近藤に呼ばれた山崎が持っていってしまった。ついでに布団まで敷いて行ったようで寝てしまうかとあっさりと土方の心は決まったようだ。

最近確かに仕事をし過ぎていた。寝食を忘れ仕事に没頭し気が付けば日付が変わっていた、なんてざらで。見かねた山崎がおにぎりなんかを持ってきてくれていたがなんとなく腹も減らなくて、割と体重も落ちた気がする。急に立ち上がると立ちくらみがするなんてしょっちゅうだしたまに仕事中であるというのに意識がぼーっとする。よく考えたら結構重症なのかもしれないなと溜め息をつき土方は布団に寝転がった。

近藤に心配されるまで自分でも気付かなかった。体調管理も出来ないなんて自分もまだまだだ。

「………」

そういえば最近は飲みにも出掛けていなかったし昼寝から目が覚めたら久々に出掛けるのもいいかもしれない。

「……………」

そういえば睡眠時間を取れと命令されてしまった。他の仕事のことも考えるとできるだけ早く計画案を仕上げてしまわなければ。

「……………………」

そのためにも少し休んだところを見せて書類を奪い返さないと。ああでも今日は無理だろうからさっさと寝てスッキリした頭で気分転換にでも出かけよう。酒もいいが久しぶりに健康ランドでもいいかもしれない。

「…………………………………」

…羊が1046匹、羊が1047匹、羊が…

「……………………………………………」

マヨネーズが2092本マヨネーズが2093本マヨネーズが2094本マヨネーズが…


ぶちっ


「っだぁああああああッ寝れねぇえええええええええええ」

思わずがばりと飛び起きて土方は叫んだ。突然の大声に中庭にいたらしい雀が一斉に逃げていったが知ったことか。どうせ食べられなかったおにぎり目当ての奴らだ。そのうちまた集まってくるだろう。山崎が聞いたら泣きわめきそうなことをさらっと考えた土方は頭を抱えた。何でだ。横になって暫く経ったのに。全く、一切、これっぽっちも眠気が来ない。羊を数えてみてもマヨネーズを数えてみても全然ダメだ。むしろ腹が空くし目が冴えてきた。

「なんでだ…」

ごろごろと寝返りを打ってもいつもならすぐにやってくるはずの睡魔が一切来ない。

「チッ、どうすっか…」

普段働いている時間帯に寝ろというのがそもそも無理な話なのだ。土方はもぞりと起き上がってぐっと伸びをした。

「ちと予定が狂ったが、先に健康ランドにでも行くか」

布団をおざなりに畳んで隅に避けると土方は着流しに着替え刀を腰に差すと携帯と財布だけ持ち近藤に一言かけてから出かけることにした。近藤は心配そうな顔をしていたが昼の日中から寝れるかと言うとそれもそうだと笑い羽を伸ばしてこいと快く送り出してくれた。


からの、


映画→坂田隣席→寄りかかって寝てしまう土方→映画終了→おーい、ひーじかーたくーん。いい加減起きてくんねぇ?帰れないんだけど(ドアップ→びくぅ→え、あれ、寝…!?→何?人の肩借りてぐーすか寝といて何その反応→よりにもよってこいつの肩にもたれ掛かって爆睡とか…いやまて→なんか知らないけど俺もう行くからお前もさっさと出ろよ→思わず腕をつかむ→ちょっと話がある→話難い話なのだというと思案顔な坂田が顔馴染みの連れ込み宿へ連れて→で?何だって?→座布団に座り向かい合う→くらっ(抗いがたい眠気)→………話は後だ。ちょっとお前そこ動くな金は後で払う。まさかの膝枕→微睡み擦り寄りそうになったところで状況把握後飛び起き→坂田もうとうとしてた→あ、起きた?→な、ん→いやだって足しびれたし。なんか抱きついて離さないし。金払うって言ってたし。

依頼だ万事屋、俺と寝ろ

ぶっふぅ!?は、あ!?何言ってんの正気か?!

なんだ。別にお前にはなんの技量も求めてねぇぞ。お前はなんもしなくていい。寝転がってりゃ数時間で金が転がり込んでくる。悪い話じゃねぇはずだが。

人聞き悪い言い方やめてくんない!?銀さんめっちゃテク持ってるかんね!つーかなんで俺がてめぇと…!

あ?一回も二回も変わんねぇだろ。

……はい?

野郎と添い寝とかどんだけ寒い絵面だよって話だがな。背に腹は変えられねぇ…絶対に失敗出来ねぇ任務が近いんだ。万全を期したい。

添い寝…はぁあ??

実は、最近…

なぁるほどねぇ…でもね土方くん。うちは万事屋であって風俗じゃねぇのよ

なんでもやるから万事屋なんだろうがってか別にやましくねぇだろ男同士で。

よく考えてみろよ?かぶき町に店を構えてる万事屋に添い寝を依頼って、どう考えてもそっち系だろうが

なんだ。そんな依頼来たことあんのか。

あるわけねぇだろ。あってもお断りだってのそんな面倒そうなこと。

面倒ごとに自分から首突っ込んでいく奴がなにを

違いますぅ。いっつもなんでか巻き込まれてるだけですぅ。

じゃあついでに今回も巻き込まれてくれや。

………

ちなみに報酬は普通の倍額払う。

ぐ、

一応私邸があるからそっちに通ってもらって、寝るだけだ。他言無用だが祭りまで一月もねぇ。そこさえ無事越えればお役御免だ。

…恋人にしてもらえよ

そんな浮わついたもんいねぇし、つくるつもりもねぇ。吉原も考えたが、いつ寝首をかかれるかもしれねぇしな。

…そうかぃ。幕臣様は大変なこって。

で?引き受けてくれんのか?

お宅の下っぱとかは?慕ってる奴もいんだろ。お前が床に誘えば喜んでついてくんじゃね?

変な言い方すんな。つうかねぇよ。昔は雑魚寝なんてしょっちゅうだったが、いい歳した男が不眠症だから一緒に寝てくれとか…誰かに頼むくらいならいっそ腹切るわ。下には示しがつかないから論外。

俺はいいのかよ…

てめぇにゃどう思われようとどうでもいいしな。寝首をかかれるかも、なんて心配もねぇ。意外と義理堅いから言いふらして回ることもねぇだろ。

なぁに、意外と信頼されてんの俺。……仕方ねぇ

お。

でも素面じゃ男と同衾とか絶対無理だから。酒買ってくるから経費で落とせよ。

ちゃっかりしてんな…しかし背に腹は変えられねぇ。わぁったよ。

よっしゃーただ酒。

じゃ、さっそく今晩から頼まぁ。

おっけー。じゃあ夜に私邸行くから。

おう。

みたいな。

これから暫く毎晩仕事入るから神楽を頼むと言えば新八は訝しげな顔で。神楽はお妙と一緒なことを喜んで。


暫くはなんともなく酒で酔っぱらった状態で同じ布団に潜り込む日々で。使われてなかったらしい私邸の掃除して、布団干して快適に住めるようにして、ごはん作って待ってればぱちくりされてしまって。いがみ合うことが少なくなったからそんな顔にも素直に笑いかけることができるようになって。

風呂入ってごはん食べて晩酌をして布団に入って、ある程度距離を置いて寝てたのにいつのまにか膝が触れるくらい近くで横になってることに気付かない二人。

屯所では顔色もよくなって体重もある程度戻った土方に彼女が出来たのではと話題に。

万事屋では夕方いそいそと出掛けていく坂田にどんな依頼なのかと疑問が募り。有力なのは商売女の用心棒かなにかでその女に本気になりかけてる、という話だ


そんなある日。夜中目を覚ました坂田は土方がぴったりくっついて寝てるのを半目で見てあー、と唸りながらナチュラルに抱き寄せて再び寝落ち。触れた体温にあー、なるほどこれはいいわー、なんて思いながら爆睡。翌日土方より早く目をさまし慌てて手放す。というかすごいしょっぱい思いをする。いつも寝起きがいいはずの土方がすやっすや眠ってるもんだから尚更。そーんなに人肌は安心しますか土方くんの甘えん坊さん☆とか思ってみてもどう考えても同じような体型の男を抱き締めて寝こけてた自分も相当ですだいぶ毒されてますありがとうございました。

結局なんか起こすに起こせず土方遅刻ギリギリで駆け出してくことに。

起こせよマダオ!って叫ぶ土方がパンいちで着替えてるの何故かなんとなく見れなくていいからとっとと行ってこい!て怒鳴っちゃってああ行ってきます!!ってバンって扉閉めるの見てシーンてしてからはぁあああって心底ため息ついちゃう坂田。


そっから自分が寝やすいスタイルで寝て何が悪いって無理矢理開き直る坂田が深夜土方が寝入った頃にぎゅって抱き締める犯行に及ぶようになる。

土方は坂田の体温がそばにあるだけでぐっすりだが接触してると匂いで安心するのかさらによく眠るようになる。


祭当日。早めに目が覚めた土方は硬直する。

顔、近ッ…!!!

朝日で銀色の睫毛がきらきらしてる…ってかなんでナチュラルに腕枕!?手足絡まってるし抱き締められてるしなにこれどういう状況!?

ドキバクしながらあれ、なんでこんな動揺してんの!?ってなる土方まさかこれ毎日こんな寝方してたの!?えええってなる土方。坂田がんー…とか言って目が覚めそうになったら思わず寝たふりしちゃう土方。

欠伸して伸びした坂田がふって笑いながら寝起きの低い掠れた声でオイ、起きろよ土方。今日早いって言ってたろってさらって優しく頭撫でるもんだから暫く硬直しちゃう土方。

ぎくしゃくしながも平静取り繕って朝御飯食べて仕事完璧にこなして上様におほめの言葉を頂くことができてほっと肩の荷が降りる土方。

真選組の打ち上げをして屯所の自室に戻って久しぶりの布団にダイブ。眠れはするんだけどなんか布団が広く感じて。

後始末とか済んで菓子折でも持っていくと万事屋には坂田ひとりで。

土方くんさ、不眠症、俺に移した?
は?

なーんか、ここんとこ布団が広く感じるんだよね。で、寒くて目がさめる

そうかよ。

こう、抱き締めるものがなくなってて手をさ迷わせても触れるのは冷たいシーツってのがな…

やっぱ、抱き締めて寝てたのか…

あ、バレてた?

やったら甘い匂いが移ってるって山崎ににやにやされた。布団から移ったにしてはぷんぷん匂いやがる。

はは、悪い悪い

心にもねぇことを。

不眠症にした責任、とってくんね?

てめぇが勝手に人のこと抱き枕にしたんだろ。それこそ恋人にでもしてもらえよ

んー。でもお前じゃなきゃ駄目だと思うんだよね。

は?人肌恋しいなら誰だっていいだろ。

人恋しいだけならな。残念ながら俺が欲しいのは抱き枕じゃねぇんだよなぁ…つか寝顔見ながらムラムラした時点で腹括ってんだよね。

は?

抱き枕じゃなくて、お前が欲しいってこと。

みたいな話がみたい。