「で、なにこの状況」 どくどくと痛いくらいに鳴る心臓、酷く熱い体に呼吸が乱れる。カラカラに乾いた喉から絞り出した言葉はやたら掠れていた。 「何って、なにが」 しらばっくれ聞き返した目の前の恋人はくわえていた煙草を灰皿に押し付け揉み消すとスカーフをしゅるりと引き抜き妖艶に笑った。 「なにがじゃねぇえええええ!!と、りあえず、手ェほどけ、話はそれから、」 上着とベストも脱ぎソファの背凭れに放った土方がベットに足をかけた。思わず身をよじるとベッドヘッドに括りつけられた縄脱け出来ないよう複雑に縛られた両手首がぎちりと鳴る。 「オイオイそんな逃げんなって。可愛い恋人のお茶目なイタズラだろ?大人しくしてりゃ悪いようにゃしねぇからよ。」 お行儀悪くベッドに立った自称お茶目で可愛い、猛アタックの末最近ようやく頷いてくれた俺の愛しの恋人は、白い靴下に包まれた足でげし、と人の腹を踏みつけ、くつくつと笑う。 チンピラ警察のNo.2が心底楽しげに瞳孔全開の瞳を細める様は、笑う子も泣き出しその辺のゴロツキでも思わず腰を抜かすほどだが。銀時にとって、こんな状況でそんな感想をこぼすことの危険性を重々理解しているので口には出さないが、そんな顔も可愛いなーくらいにしか思えない。恋は盲目とはよくいったものだ。まぁこんな状況じゃなければ、の話だけれど。 「大体いっつもてめぇばっか好き勝手してんだから、たまにはこっちの我が儘聞いてくれてもバチ当たんねぇだろ。」 一瞬現実逃避したのがバレたのか、つぅ、と腹筋をなぞった爪先にぞくぞくと肌が粟立つ。ぐっと歯を食い縛ったのを見て土方はそれはもういやらしく獰猛な顔で笑った。 「なぁ、万事屋?」 坂田銀時、貞操のピンチです。 |