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※嘔吐注意


目の前に居る金髪は、持っていた魔法瓶をそれはそれは愛しそうに見つめた。彼の頬はうっすらと赤くなっている。彼が魔法瓶を見つめる眼差しは、子を見る母親の様だった。
私は問い掛ける、そこには何が入っているの。

「知りたいですか」

こくり、頷く。すると彼は、魔法瓶の蓋を開けた。瞬間、物凄く嫌な臭いに包まれる。吐き気がした。彼は魔法瓶の中を覗き込み、中で揺れているであろう液体を眺めた。

「これは、風丸さんの吐き出した物です」

私に見向きもせずに彼はまるで独り言のように呟いた。風丸くんの、吐き出した、もの。風丸くんの嘔吐物。あの魔法瓶の中身は、風丸くんの身体の中で消化されずに残った物なんだ。あの魔法瓶の中には、風丸くんの体内から吐き出された、液体が入ってるんだ。彼はずぅっと魔法瓶の中身を見つめたままだった。

「僕は風丸さんがとてもとても好きで、風丸さんの全てを愛しています。風丸さんの吐き出した物ですら愛しいんです、おかしなことに風丸さんは自分が吐き出した物を僕が集めるのを見て凄く泣いていたけれど、そんな風丸さんも凄く、」

そこで言葉を区切った彼は、魔法瓶の縁に口を着けた。私の胃から消化されなかった物が逆流してくるのが解った。途端に立っていられなくなり、膝を床についてしまう。手で口元を覆っても、抑えられなかった。

「う、ぇ」

気持ち悪い。ただただ気持ち悪かった、目の前に居る彼が、彼が行った行動が、魔法瓶の中身が。床に吐き出した物をぼんやりと見つめる。ああ、スカートがべちゃべちゃだ、汚い、

魔法瓶の中身を飲み干したのだろうか、彼はうずくまる私を見下ろしながら、「冬花さんのはいらないや」と言った。私は吐き気が治まらなかった。


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「嘔吐」さま提出作品

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