後少しだけ郷ミカ







カラッと軽くスライド式の扉が開く。
その音を聞いてベッドから上半身を起こし窓の外を見ていたアミは振り向き目をぱちくりと瞬かせる。

「……仙道…?」

意外とでも言いたそうに首を少しだけ傾げた。

「何だよ、来ちゃ駄目だったのかい?」

「だって、今まで来なかったじゃない。」

独特の病室の匂いをかぎながらベッド脇にある椅子まで歩き腰を掛けた。

「俺にだっていろいろあるんでね。」

「色々、ね。…あ。そうそう今さっき郷田とミカが来たの。」

「……知ってる。入り口で会ったよ」

少し間を置いた後仙道は思い出したように眉を寄せる。

「どうしたの?」

「……郷田に言われた事思い出してイラついてる。」

「? 何て言われたの?」





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首に巻いてあるものが垂れてくるのを慣れた手つきで後ろにやれば目に写った人物に眉を寄せた。

「郷田…と三影ミカ…」

「仙道?!」

郷田の驚いた声と同時に二歩程後ろを歩いていたミカはきょとんとした顔をし、次に仙道を見やる。

「……お前なんか病気なのか?」

「はぁ?」

郷田から出された問に仙道は呆れた声を出した。
結構深刻な声で言われれば何故そんな思考に行き着くんだと溜め息を付く。

「この病院だろ?川村アミが入院してるの。」

「え?、ああ。ってアミの見舞いに来たのか?!」

「悪いかい?」

二人の顔を睨みつけると、あの仙道が見舞い。と呆気ない顔をする。
自分だってキャラでは無い事は重々承知だ。

「ミカ、この後雨か?」

「今日はずっと晴れですよ。」

ミカの肩をポンポンと叩いてひそひそと耳打ちをするが、バッチリ聞こえる。

それに苛立ちを覚え仙道は二人を無視するように病院の中に入っていった。


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…と一部始終をアミに言うと自分の膝に突っ伏し笑いをこらえている。

「…せっかく来てやったのに侵害だねぇ」

「ふ、だってっ…ごめん…」

くすくすとこれでもこらえてるのよ。と言うとタチが悪いね。とつまんなさそう組んだ足に肘を乗っけて頬杖をつく。

「そう言えば郷田から聞いたわよ」

「? 何を?」

笑い済んだのか目元に溜まった涙を拭いながら相変わらずむすりと眉を寄せる仙道に言う。

「アルテミス、出るんでしょ?」

「まあね」

「大丈夫なのかしら、仙道と郷田で。」

「アイツが足引っ張らなければ大丈夫だよ」

ニヤリと唇の端をつり上げれば、そう、と微笑む。

「あーあ、私も入院さえしてなければ…私だってファイナリストのメンバーだからメールだってきてるのに。」

CCMを開きそのメールを仙道にちらつかせる。

「バン達も出るんでしょ?」

「ああ、そう聞いてる。到着してから会う予定何だとさ、会わせたいヤツ等がいるとかって郷田から聞いた。」

「私も少ししか会ってないけど、ジンとか知ってる顔も居るから安心しなさい」






「仙道」

少しの沈黙の後、アミが真剣な声を向けたのでちらりとアミを見やる。

「どうしたんだい?」

「…頑張ってね」




「私の分まで…」

「…」

そう言い切った後、何回か瞬いた後少し頬を染め「バン達にも言っておいてね」と付け足した。

「ん。」

「ちょっと!」

仙道が立ったと思えばくしゃりとアミの頭を撫で始める。
何時ものイヤーマフが無いせいで手は何にも引っかからず、スムーズに撫でる事が出来る。

「別にお前のためってワケじゃねぇけど、優勝は俺だ。バン達には負けねぇよ」

「…ふふ、そうね。仙道ならそう言うと思った」

アミはもう一度頑張ってねと声をかければ、仙道は誰に言ってるんだい?と呆れたように笑った。









オチがつかないけどオチたって事で。
アミちゃんが退院したって聞いてすぐ浮かんだネタだったんですが、形にするのがまた遅いって…すみません。


2012/08/03

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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