あ、居た。
心の中で止まった言葉は椅子に座った少年に向けられていた。
後ろ向きで一つに括られた髪は空調のせいでそよりとなびいている。
「ユウヤ!」
「わ?!」
背中にポンと手を置くと、思ってたより驚かれて逆にこちらが驚いてしまう。
「ラン君?どうしたの?」
またジェシカ君と買い物にでも行ったのかと思ってた。と言われれば、この間行ったばっかだしね。と返す。
「バン達は?」
「バン君はヒロ君に引っ張られてどこか行っちゃったよ。ジン君とジェシカ君はわからないなあ…」
別にみんなの行方が聞きたい訳じゃ無いんだけど、ユウヤは丁寧に教えてくれる。
「ユウヤは何してるの?」
「ん?Lマガ読んでたんだ」
そう言いユウヤは少しだけ腕を上げれば、パサパサと紙が重なる音がなりランもLマガに視線を落とす。
月が今月、最新号だった。
「いーな、私も読みたい!」
「ちょっと待ってね、僕が読み終わったら貸してあげるから」
パラリとページをめくる。まだ半分くらいしか目を通していないようだ。
確かに読みたいのもあるけど本当は話ネタが欲しかっただけ、また話ネタなくなったなあ、とこっそりため息を付く。
あ…そうだ。
その手がある。そう思うのと同時にランの体は動いていた。
「ユーウヤ!」
「ん?…え?あ!」
ユウヤは背中に与えられた体温にただ驚いた。
背中にはピタリとランがくっついていて誰がみても後ろから抱きしめている状態になっている。
「ら、ラン君??!」
「ほらほら、このページ観たから捲って捲って!」
背中から伸びてきた腕に何も出来ずにユウヤは意識を背中からずらす事で精一杯になっていた。
「ラン君…はなれ…せ、せめて隣に…」
「なんで?こっちの方が見やすいじゃん」
そう言われればユウヤは何もいえずに黙ってしまう。
ランはユウヤの横から顔を出し同じ目線で読んだいる。が、ユウヤはLマガどころではなくなっていた。
――こう言うのは、もう少しスタイルが良いジェシカみたいな子がやるべきなんだろうけど、私なんかでアピールになってるのかな…。
「ねえユウヤ、この双剣ミネルバに良いかも!……ユウヤ?」
捲ったページの新作の武器の一覧。指を指して聞いてみるが無反応だったため、首を傾げながらユウヤの顔を覗き込む。
「へ?!あ、そうだね?いいんじゃないかな?」
「…ユウヤ、顔真っ赤だよ?」
「…………風邪か、な?」
「ねえジン、あれは何をしているのかしら」
「ランがユウヤをからかってるように見えるが」
「…。」
「…あの方法は良いわね、今度試そうかしら」
「ジェシカ…何の話だ?」
「別に?」
リハビリ
2012/07/18
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