相変わらず両想い風。
カッカッとコンクリートを蹴る音がしたかと思えばカランとブルーキャッツのドアベルが来客を知らせる。が、靴音で分かっていた檜山は扉で少し息を切らしている少年を見て声をかけた。
「いらっしゃい郷田」
「へ?ああ…ってそうじゃなかった!」
郷田はドンドンと近づいてきてカウンターをはさみ、目の前に緑色の瞳が映る。
「レックス、何も言わずに隠ませて下さい!」
「は?」
気の抜けた返事をした頃にばたばたと三人ほどの足音がして、また来客を知らせるドアベルが鳴った。
「「「レックス!」」」
綺麗に重なった声はバン、カズ、アミの物で息がすっかり上がっていた。
「どうした?三人共」
「あ、いや郷田来てないかなって」
「郷田?」
ちらりと目線を下に向ければカウンターの中で必死に手を合わせて居ないと言ってくれとアピールをしていた。
「……来てないが?」
言いつつちょっとだけ微笑んだ後、またカウンターの中を覗けば郷田はホッと胸に手を当てた。
「で、郷田がどうした?」
「そーなの!レックス聞いてよ!!」
と、アミは身振り手振りで説明を始めた。
「郷田が…告白されてた?」
「おう、一年の子じゃ無かったけどさ、スラムでたまたま見ちゃって。何言ってるか全然分からないから気になっちゃってさあ。」
カズは見たままをポツポツと語り始め、半分程聞いたのち三回目のカウンターを覗く行為をする。
その視線にびくりと郷田の肩が震えた。
…何時もより視線が冷たい…。
こういう視線の時のレックスは良い事は考えてない、これは三人が居なくなったらブルーキャッツからも出ないと、…怖い。
「まぁ、居ないなら仕方ないわ。出直しましょう。」
「そうだなー明日学校で問い詰めようぜ」
「俺はあんまり問い詰めるとかしたくないけど…じゃあレックス、また来るね!」
カランとドアベルがなればブルーキャッツから三人の影が消えた。
檜山はため息を一つ付き
「どこに行くんだ?、郷田」
と言えばカウンターから静かに出ようとする郷田を呼び止める。
「何でしょうレックス…」
「今の話、俺も詳しく聞きたいんだが?」
「今アミ達が喋った事全てですよ…?」
「告白されたのか?」
少し目をそらした後明後日の方向を向きながら郷田は少しだけ首を縦に振った。
ミカ以外にも居たのか物好きな奴が。
いや、印象が良く無いだけで喋れば真っ直ぐで頼れるイイ奴だ。きっとそんな郷田の一面を見て知って告白をしたんだろう。
「それで?」
「はい?」
「断ったのか?」
「あ、当たり前じゃないですか…相手の事まったく知らないのに…それに」
「?」
「…俺には、レックスがいますから…」
最後になるにつれて言葉が尻すぼみになる。赤くなった顔を手で必死に隠すが、全体的に真っ赤なので全く意味をなさない。
「まったくお前って奴は…」
ククッと笑い、郷田の頭をくしゃりと撫でたら子供扱いしないで下さい!と怒られた。
頭撫でるって行為が好きだなって最近思う。
2012/04/30
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