12月〜1月上旬まで置いて置いた拍手文です。
冬ね。
と溜め息を付けば前に席に座る彼は眉を寄せて、んなの知ってるよとつぶやいた。
「年末が寒くなければ異常気象さ」
「寒がり仙道」
「うるさい」
ファーストフードの一角で室内だと言うのに彼は着てるコートを脱ぐ気配はない。
食べ終わったトレイを横においやり彼はバサバサと参考書を開いていた。私にはまだ無縁の受験勉強と言う奴だ。
郷田もこの間スラムで参考書とにらめっこをしていたので、ああ彼らは受験生なんだ、と思い知らされた。
「着っぱなしだからすぐ出るのかと思った」
「お前の家に行くなら良いけど?」
「大掃除中で散らかってるから嫌よ」
あっそ、と軽い舌打ちをして筆箱から使い慣れたシャープペンシルを取り出してノートに答えを書き始めた。
けだるそうに少し細められた目、長い睫毛がまた似合う。
綺麗だなぁ…。
何を食べたらそんな風になるのかしら。
ずっと気になってみていても特に何もしてないのが不思議でしょうがない。
「おい」
「へ?あ…いった?!」
声を掛けられたと思ったらデコピンされてしまった。痛い。
「何すんのよっ」
「何度も呼んだのに無視するお前がいけない」
「無視なんかしてないわよ…別に」
「あんまりジロジロ見られるの好きじゃないんだよなあ…」
と言う癖に私の事はよくみてる。
私だってジロジロみられるのは好きじゃない。
「ただ、参考書みてる仙道が綺麗だなって思っただけよ」
「……はあ?」
「やっぱり前に座らせるの嫌だ」
「え?」
「俺の家行くぞ」
そう言うと広げていた参考書などをカバンにしまい、腕を引っ張られた。
ありがとうございましたーと愛想笑いの店員に見送られ私達は店から出てきた。
「そのふざけた考え無くしてやるから覚悟してろよ」
「…」
そうして私は綺麗だと言った言葉を後悔する事になるとはまだ知らない。
安定のクオリティでした。
2012/04/13
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