アミの目の前にぽん、と白い袋が置かれる。
「何かしらこれは」
「まあ、オカエシ。かな」
CCMの画面をさす日付を見やると今日はホワイトデーだと言うことを思い出す。
学校の帰りにCCMがメールを受信した。宛名は仙道で今すぐここに来いと命令文の内容で、私はファーストフード店に呼び出された。
そして今に至る。
「開けて良いのかしら?」
「ドウゾ。」
アミは目の前の袋を手に取るとゆっくりと開け中身を見る。
「…これは…」
「見れば分かるだろ?シャープペンだよ」
「どうして…」
「まあ色々と。」
アミは目を瞬かせると、ポカンとした表情で仙道を見やる。仙道は何時ものような笑みでアミを見返す。
このシャープペンは少し前に私が使っていてつい最近壊れてしまった凄く気に入っていた物…それと全く同じ色、同じ形をしていて。でも壊れた物は私のペンケースに入りっぱなし。
「もうこれ作られてない奴だったのに…なんで…」
「さあて、何でかねぇ」
「…」
「まぁ、権力ある奴はとことん利用してやらなきゃな」
「…もしかして郷田とジン使ったとか…言っちゃう?」
「説明したら喜んで協力したぜアイツ等」
机の上で指を組み組んだ指の上に顎を乗っけると悪戯を含んだ笑みでアミを見つめる。
言っている事は相変わらずだけど、多分一番頑張って探してくれたのはきっと仙道で。
「三倍返し以上だわ。」
アミは微笑んでシャープペンの入った袋を鞄の中にしまうと目の前のトレイに乗っかったハンバーガーを取り食べ始めた。
「そりゃどうも、…後コレな。」
仙道はジャケットのポケットから思い出したように取り出し、自分の目の前に置く。
「そのシャープペンは俺と郷田と海道ジンからって事で。コレは俺単独。」
今目の前に出された袋を受けとりかさりと開ければ飴玉の詰め合わせだった。
「これは…」
「量り売りの飴玉の詰め合わせ。」
「量り売りってショッピングモールとかによくある、ワゴンの?」
「そうそう。シャープペン以外の事考えて無かったんだよ、そうしたら郷田が怒りやがってね」
あの郷田にだぜ?とため息をつくとトレイに乗っていた飲み物に口を付ける。
「とりあえず一応あの二人にも礼でも言っといてやんなよ」
「ええ明日会った時にでも言わせてもらうわ」
アミは目を細めて脇に置いた鞄をこっそりと撫でた。
ホワイトデーっぽい気もしなくもない…。
別にバレンタインの話とは繋がりはないです。
2012/03/17
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