今更バレンタイン。
甘い物が好きな仙道さんの話。逆にユジンさんが甘いの苦手。
「何コレ。」
ああ、今日はバレンタインで。と厚いメガネの男はふにゃふにゃと笑顔で説明をしながらスーツから部屋着に着替えている。
「んな事は分かってるよ」
鞄の中に少なくとも四つは入っていた、義理でも四つは貰えている方なのではないか。
「あ、会社の女の子達が配り歩いていたんですよ!」
「…ふーん」
なら納得かなと鞄に入っていた包みを机に並べ始める。
「仙道君食べますか?」
「何で」
「毎年頂くんですが、甘い物はあんまり…」
着替え終わったユジンは仙道の横に腰を掛ける。
「ああ、でも仙道君はモテそうですね。沢山貰ってるからいりませんか?」
「決めつけるな。二つしか貰ってないよ。」
「二つ…ですか?」
「川村アミと三影ミカから」
「ああ、アミたん達ですか」
「キモいからその言い方やめな」
「…スミマセン。でも意外です」
「まあ、あいつら以外のは全部断ったからね。」
ええ?!と半場裏がえった声を上げられ此方が驚いた。
なぜそんなに驚くのか。
「仙道君って確か甘い物好きですよね?なら全部受け取った方が…」
「変な勘違いされても困るからねぇ…それに」
いつの間にか仙道の手には板チョコが握られていた。
「俺はあげる側だからね。」
はい、とユジンは前に出されたのを受け取れば、パッケージの隅にビターと書かれていた。
「これは…」
「甘いの苦手って言ってたから。ほんとはコンビニでバレンタイン用の買おうかと思ってたんだけど、甘いのしか無くってね。」
「…」
「要らないならイイんだけど」
「あ、いえ!そうじゃなくて!」
ユジンは部屋の棚から一つの薄紫の包装紙でラッピングされた箱を取り出した。
「これは…?」
「僕が甘い物苦手と言ったから仙道君買ってこないかなって…だから僕が用意してみた…と思ってたんですけど」
「…」
ラッピングされた箱を見つつ、仙道は見覚えがある事に眉を寄せた。
確かこの間たまたま付けたテレビから流れてきたバレンタイン特集、それで紹介されていた奴だ。
「これ…トキオシアの特設コーナーで売ってる奴じゃないかい?」
「あ、よく知ってますね!特設コーナーが閉まるギリギリの人が居ない時を見計らって買ったんですよ」
「…へぇ」
仙道が目を瞬かせ、ふとこれをユジンがスーツ姿でレジに持っていき買っている姿を想像してしまった。
直ぐに片手で口元を隠せばユジンがむっと眉を寄せる。
「何で笑うんですか」
「ふっ…いや、悪い…」
恥ずかしかったのに笑われるとは心外ですよ。と呟く。
「ユジン」
「はい?」
「ありがとな」
「…はい!」
そう言うと仙道は丁寧にラッピングを解いていった。
最近はデパートの特設コーナーに男の方よくいるなーと。逆チョコがブームなのかしら。
2012/02/16
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